Friday, December 30, 2016

書評:橋本健二著『現代貧乏物語』弘文堂

読売新聞(2016/12/19夕刊)の記事で本書を知り、さっそく読んでみた。著者は社会学者で、河上(1916)に倣い、現代日本の貧困の「現状」「原因」「対策」をそれぞれ論じている。

総じて読み易く、所得分布や意識調査といった証拠を示し、関連する理論を解説し、100年前の河上の問題意識に接近しているのが本書の特徴である。もちろん河上を読まなくても、理解できる。貧困問題を考える「たたき台」として手に取って頂きたい。

近年、貧困と所得格差の問題は世界的にPiketty(2014) Atkinson(2015)、日本では橘木(1998)や、佐藤(2000)、大竹(2005)が火付け役と言っていいだろう。彼らは現代の貧困や格差を実証的に論じている。Pikettyは世界的に格差が拡大していることを膨大な統計と文献で論証し、Atkinsonは貧困と格差問題への対策を提言している。橘木は日本で所得格差が拡大していることをジニ係数(0が完全平等、1が完全不平等となる統計指標)で示し、大竹は橘木の所得計測に疑問を呈した。これが後に、「橘木・大竹論争」に発展した。

始めに、そもそも「貧困」とはどのような状態か。ラウントリー・タウンゼントの「絶対的」「相対的」貧困を踏まえ、「(世帯人員で調整した)等価所得の中央値の半分」という貧困線の定義から貧困率(全人口に占める相対的貧困者の割合)を導き、「貧困リスク」に直面する人々が「女性」「老人」「自営業・非正規」であることを導いている。これらの人々は、橘木・浦川(2006)にもある通り、低所得・低資産で、経済の変動に対してリスクヘッジ(危険回避)ができない人々である。

本書では、そういった「貧困リスク」に直面する人々への最低賃金や生活保護制度が日本では十分でないとし、まずはその社会的な認識を高め、充実させるべきだという。また、「貧困と格差」の関係について、「所得格差が拡大すると貧困率が上昇する」という形で明示的に議論している。これは一部の所得が増加することで、貧困線より上にいた人が下に落っこちるからである。さらに、「貧困率(貧困)とジニ係数(格差)」には「正の相関」があることを散布図で示し、「格差の拡大は貧困をもたらす」としているが、日本よりもジニ係数の高い英国では日本よりも貧困率が低いことから、そう断言はできない。

また、貧困率と平均寿命の相関が紹介され、「重回帰分析」を使って「男性の平均寿命がジニ係数で説明できる」という。大変興味深いが、統計的に有意ではない、また低所得が不健康をもたらすのか、そもそも不健康だから低所得なのか自明ではない中で、この説明式を採用してよいのか疑問である。つまり、「低所得⇒不健康⇒低寿命」というよりも、「不健康⇒低所得+低寿命」という因果関係も考えられうる。もちろん、低所得者は寿命が短いことは他でも知られているが(WSJ日本版2014/04/12)、政策対応としては「所得補助」以外にも子供の虫歯治療や稼得者への「健康対策」も必要だろう。

さらに、格差が深刻化すると経済成長が停滞するという主張はOECD(経済協力開発機構;本部パリ)が指摘するが、本書で挙げられている散布図では判然としない。例えばBarro(2000)は同様の課題に挑戦し、「途上国では格差が経済成長を阻害する一方で、先進国では成長をむしろ促進させうる」と結論している。これは、途上国では信用市場が先進国に比べて不十分であるために、投資が十分にできず成長が鈍るからである。本書では、「人的資本」の観点から、格差が拡大し、親の収入が減れば、その子供へ十分な勉学の支援ができず、結果経済成長を阻害しうることを示唆する。これは、読み書きが不十分ならば生産活動に従事できないことからも理解できる。子供の成績や学歴は、子供自身の「能力」よりも、親の「収入」を反映していると言ってよいだろう。

ただ、そうはいっても「格差是正により経済成長が促進される」というのは誤解だろう。政治学では「所得の平均値」が「所得の中央値」を上回ると、大多数の投票者は「再分配政策」を支持するとしているが、Prescott(2004)が言うように再分配政策として所得の限界税率を高めると、労働意欲が減り、かえって経済は停滞しうる。また、「格差が進むと犯罪が増える」というのは、自明だと言われようが、本書の性格から、統計が示されずにそう主張してよいか。これについて何らかの統計を示すべきである。

次に、「貧困」の原因として、本書では「経済のグローバル化」、「労働の非正規化」、「人口の高齢化」などを挙げているが、特に政府による所得再分配政策の不備を指摘しているのが本書の主張だろう。日本では80年代以降所得税の恒久減税が行われ、最高税率が段階的に引き下げられ、「シャウプ勧告」以来の「直間比率の是正」と称して「消費税」が導入された(読売新聞2015/10/24)。貧困層に「逆進的(低所得ほど税負担が大きくなる)」な税制が盛り込まれたのだ。ここから、政府が「貧困を助長した」とも見えるが、大竹・小原(2005)が指摘するように、生涯年収1億円の人の方が、年収4,000万円の人よりも当然多く消費するので、前者の方が生涯の消費税負担額は大きくなる。このことから、消費税が逆進的な税制とは必ずしも断言できないが、消費増税は生活必需品への支出額を高めるので、低所得者への手当ては必要である。(十分かどうかは別として、消費税率の引上げによる影響を緩和するため、政府は低所得者に臨時福祉給付金を支給している。)

理論として、本書はマルクス、ウェーバー、ローマー・ライトの「階級」理論を挙げ、社会の「階級構造」も「格差」の原因としている。本書は「5つの階級」の収入や政党支持率の違いなど示唆に富む統計を紹介していて、これはおおよそ我々の実感に合うのではないだろうか。また、エンジニアや会計士などの専門技能職の階級に社会変革の期待を寄せている点も興味深い。さらに、河上の「ぜいたく品の禁止」という貧困対策について検討している点も見逃せない。格差が拡大すると、営利目的の生産者は金持ち向けに利益率の高いぜいたく品を販売し、利益率の低い必需品の生産を控える。結果として、生活必需品が不足し、必需品の価格が高騰する。よって貧困層の支出額が多くなる(エンゲル係数が高くなる)。これについて、本書では、「ぜいたく品の禁止」ではなく「貧困層の賃金を増やす」ことで対処できるとし、先の「最低賃金を上げるべき」という主張と重ねている。

最後に、本書ではいくつか重要かつ具体的な「貧困対策」が論じられている。ここでは、特に「貧困率と生活保護率とを監視する」ことと「大学教育を受けかつ経済的利益を受けている人への課税」という興味深い2点について検討してみたい。

例えば、貧困率が高い地域で生活保護率が低いとき、生活保護支給を増やすべきか。それによって貧困率を減らせるか。生活保護については、自治体による「水際作戦(受給申請の拒否)」や「不正受給」が世間の話題となっている。「不正受給」の額は生活保護支給額全体の0.51%とかなり低く、自治体の「水際作戦」が功を奏しているかもしれない。しかし、これ以上に問題なのは、本書でも指摘されているが、必要になればすぐに申請でき、不要となれば廃止手続きをとるなど「弾力的な制度運用」ができていないことだろう。また、受給した年金を申請していない、また金融資産を持っていても所得がないということで貧困層に勘定される可能性もある。これでは、単に貧困率に合わせて保護率を引き上げても、統計上の貧困率が改善しない可能性がある。さらに、生活保護受給者の多くは「高齢者」「母子家庭」であることを考えると、受給者の実態に即した対策が別途必要であるかもしれない。例えば、現在も(要件を満たす必要があるが)高齢者向けに給付金が配られているし、母子家庭でも生活保護の母子加算、または児童手当を拡大する、フードバンク、学習塾の塾代補助など手立てはいくつかあるかもしれない。

興味深いのは「大学教育を受けかつ経済的利益を受けている人への課税」であるが、概算を試みよう。大学学部進学率(浪人含む)が51.5%、うち大学院など進学率が12.2%、就業率(大卒・大学院卒含む)が72.6%であるから、「大卒・大学院卒かつ就業」した人の割合はおよそ41.9%((0.515+0.515×0.122)×0.726)である(文科省2015年分)。かりに、本書とは違う課税方法だが、平均年収415万円を超える年収400万円超の給与所得者(国税庁2014年分)1,988万人(全体の41.8%)全員に月当たり11250円(年間13.5万円)の定額「大学教育税」を賦課すると、

0.419×1,988万人×13.5万円=11,245億円

で、2012年の(独)日本学生支援機構の総事業費(無利子・有利子奨学金事業総額;11,263億円)を大体まかなえる。この税金を評価する要諦は、「応能原則(能力に応じた税負担)」だけでなく、「応益原則(受益に応じた税負担)」に適っているかということであるだろう。つまり、年収400万円以上の大卒・院卒が、同じ年収の高卒よりも1万円以上の大卒・院卒からの便益を受けているかである。また、本書では、年収の高い大卒・院卒を採用した企業に課税しても良いとしているが、これは「税の帰着」問題として財政学で議論されていることだが、「企業に税金をかける」と「労働者も負担する」ことになるので、結局税金は労働者である大卒・院卒さんが負担することになることも押さえておきたい。

最後に、この手の議論でよく出てくるのが「ベーシック・インカム」、つまり国民全員に無条件にお金を配るというもの。これは、例えば平均年収(先の415万円)の10%相当(41.5万円)を年間無条件で受給するには、実際に稼得する年収の10%相当の課税を要することを念頭に入れておきたい。つまり、年収300万円の人は年間30万円相当の所得税に、住民税、年金・健康保険料を支払う義務を要する。当然所得の有無に関わらず支給されるので、所得がない人には無償でお金がもらえ、働いている人は、働いた分のお金から所得税を引いた分、と無償のお金がもらえるので、勤労意欲を阻害しない。が、税負担はかなり大きなものになる。

色々長々と書いたが、著者と思いは共通している。学術書ではない、誰でも手にとって読める本であるので、是非読んでいただきたい。

1.      河上肇(1916)『貧乏物語』弘文堂
2.      Piketty, Thomas(2014), “Capital in the Twenty-First Century”, Belknap Press
3.      Atokinson, Anthony(2015), “Inequality: What Can Be Done?”, Harvard Univ. Press
4.      橘木俊詔(1998)『日本の経済格差』岩波書店
5.      佐藤俊樹(2000)『不平等社会日本』中央公論新社
6.      大竹文雄(2005)『日本の不平等』日本経済新聞社
7.      橘木・浦川(2006)『日本の貧困研究』東京大学出版会
8.      Barro, Robert J.(2000), Inequality and Growth in a Panel of Countries, Journal of Economic Growth
9.      Prescott, Edward C.(2004), Why Do Americans Work More Than Europeans?, The Wall Street Journal, Oct. 21

10.   大竹・小原(2005)『論座』127 号、4451

Friday, November 18, 2016

日本を変える十大提言

(1)全額税方式の最低保障年金の創設
(2)正規・非正規の格差是正(同一賃金同一労働)
(3)医療保険の自己負担を所得額に連動
(4)法人税/事業税の廃止・脂肪/糖質税の導入・消費税25%に
(5)高校の義務教育化
(6)教員の修士号取得義務化
(7)大学の統廃合推進
(8)衆参議員数の定数倍増(ただし歳費は1/6)
(9)公務員給与を経済成長率に連動
(10)戦略的核保有の容認(非核三原則を修正)

Saturday, March 12, 2016

Robert Hall on Forward-Looking Decision Making

As I have had an interest in this book before, I read it through just now. The author is a prominent economist of Stanford. He writes the basic principles of Dynamic Programming (DP) used in economic theory and the parameters used in the following models in this book, and then issues on health, insurance, labor, risk and government-guaranteed debt through the lens of DP.

I like Chapter 3 on health best of all. This is based on Hall and Jones(2007), QJE and asks and tackles why the health spending has been rising in the United States. This is the very serious issue not only in the US but also in Japan, my lovely and rapidly aging country.

The author tells the health spending rises over time as income grows if the marginal utility of consumption fall sufficiently rapidly relative to the joy of living an extra year (pp31) and shows it through the model built by DP. This is highly recommended for students and policymakers who have a great interest in health issue.

I studied DP as a graduate student and could read this book. It is better to know how to build the dynamic models by DP. That is, building the Bellman equation,

V(K)=max{C^(1-γ)/(1-γ)+βEV(K')}

and deriving the Euler equation,
RβE(C'/C)^(-γ)=1
is best for readers to grasp the contents of the book.

I would like the author to write more on DP for beginners, and the models introduced in the book, but it is true that shorter book is accessible to read. This is a highly recommended sub text or book for econ and business graduate, upper-level undergraduate students and econ or public policy researchers.

(This post is the English-translated version of the previous post, 12/03/2016.)

ロバート・ホール「前向きな意思決定」

前から気になっていたので、今回一気に読んでみた。著者はアメリカの著名なマクロ経済学者である。経済学で使用されるダイナミックプログラミング(動的計画法)の簡単な概要に始まり、本書で紹介されるモデルのパラメータを解説した後、医療、保険、労働、起業家が直面するリスク、政府保証の債務問題を解説する。

小生にとって医療問題が一番面白かった。これはHall and Jones(2007),Q.J.Eを元に、アメリカにおいて「なぜ医療費が増加するのか」という危急の課題に焦点を当てている。近年日本においても社会保障関係費が一般会計基礎的財政収支対象経費のおよそ4割、歳出全体の3割を占めている(2015)。毎年1兆円ずつ増加する社会保障関係費のうち7割を占めているのが年金・医療保険であり、医療費の増加が高齢化進む日本において深刻な課題となっている。

従来「技術革新・新薬の登場」が医療費の増加の原因とされてきたが、この論文ではダイナミックプログラミングを用いて、国民所得の増加とともに、消費支出が増える中、医療にかかる限界効用が消費活動の限界効用よりも速く逓減しないために医療への支出が増えることを示している。

つまり、寿命を延ばすことにより高い価値を求めるがために医療費が増えるのであり、それは合理的な選択の結果であることを示しているのである。伝統的に寿命が延びることは評価されてきたが、年金や医療費 の高騰をもたらして国家財政を圧迫している現実もある。著者はアメリカにおいて社会厚生を最大化するためにはGDP(国内総生産)の3割を医療費支出が占めるのが望ましいとしているが、日本においては保険医療費はすでにGDPの1割を占めている(日経新聞2014/8/27)状況である。具体的な対策につ いては言及はしていないが、医療問題を考える優良な資料となっている。

ただ、もうちょっとダイナミックプログラミングについて解説があった方がいいと思うし、モデルの解説ももうちょっとほしい。 多期間の消費決定問題において、ベルマン方程式、

V(K)=max{C^(1-γ)/1-γ+βEV(K')}

を組んでオイラー方程式、
RβE(C' /C)^(-γ)=1

を導くことができれば本書の内容を理解できようが、詳細は元論文に当たる必要がある。経済学の参考書としてお勧めしたい本である。

Thursday, August 27, 2015

Stigliz on 6 ways to rein in inequality スティグリッツさんの6つの格差対策

1)Change the way money runs into political process
2)Redistribute income by taxing on profit and carbon
3)Reform the system of CEO pays
4)Lend more to new businesses and households
5)Organize new way of education to improve society
6)Mobilize politically


1)政治へのカネの流れを変えよ
2)利益や炭素に税をかけて所得を再分配せよ
3)CEOの給与体系を変えよ
4)家計や新事業に貸与せよ
5)社会を良くするために新しい教育をせよ
6)政治的に動け

 http://gawker.com/joe-stiglitz-knows-how-to-solve-inequality-if-anyone-w-1725471687



Tuesday, August 18, 2015

黄金律について

昨日のGDP速報では年マイナス1.6%の成長率という。

2014年の実質GNIは524兆円、資本ストック(取付)1280兆円、資本分配率0.4なので、資本の限界生産性は0.4。資本減耗率を8%とすると、資本の純収益率は8%。これは実質経済成長率マイナス1.6%をはるか上回り、経済学的には「動学的に効率的」である。

一人当たり実質GNIは413万円。資本の黄金律水準の一人当たり実質GNIは446万円(413×1.08)。

よって、33万円だけ収入を増やす、今後5年で1.6%の経済成長が実現できれば、国民にとって望ましい。

The annual rate of growth of Japan's GDP is minus 1.6%, and is this rate good for the people? The real GDP per capita is US$36,000 and we may as well boost it up to US$38,880.(I assume the distribution rate of capital stock is 40%, the depreciation rate is 8%, and the real rate of returns on capital stock is 8%) If the economy stays at 1.6% per year over the coming 5 years, it will be possible and people will be happier.

Monday, August 10, 2015

Portfolio Careers

The old idea of lifetime employment is fading. More people will follow “portfolio careers”, switching from one employer to another as the economy changes. This will require them...to monitor the economy for new opportunities.Many more people are likely to be self-employed, offering services to a wide range of customers. In a sense, they will be artisans, not employees.

終身雇用という古い考えは消えつつある。人々は経済が変化し、今の会社から次の会社へと移る「キャリアのポートフォリオ」に従うだろう。これからは、新し い機会を見つけるために経済を観察することが必要となろう。より多くの人々は自営業者として、様々な顧客へサービスを提供するようになる。ある意味、雇わ れ者でなく、職人だろう。

Risk, Heart and Head - リスク、感情と勘定

 Which operation is better?
#1 It will fail with prob of 60%, #2 It will succeed with prob of 40%

These operations will bring the same result, but it doesn't seem to.

If you take a cancer test, then the test is positive. The positive rate is 80% and the prob you have the cancer is also 80%, isn't it? Given about 5 people suffer from the cancer per 0.1 million people and the prob is 0.02%.

Speaking from the heart, a nuclear power plant is quite dangerous at the risk of having a high level of radiation. You might recall Hiroshima and Fukushima. However, speaking from the head, what percent is the prob that you suffer from a cancer and that you have a nuclear accident? It must be quite low. It should keep you much far away from there.

 ある2つの手術の結果として、どちらが望ましいか。
1)60%の確率で失敗する。2)40%の確率で成功する。

どちらも効果は同じだが、印象が違う。陽性率が80%の癌検診を受け、陽性反応が出た。80%で癌だろうか。発生頻度が人口10万あたり5.7人であれば、陽性反応が出たとして癌である確率は0.0228%。ずいぶん低い。

手術に限らず、原発の危険性を考える時、「感情」に訴えると、我々は非常な危険にさらされるが、「勘定」に訴えると、原発が事故り、放射線を受け、癌になるリスクはいくらだろうか。おそらく、非常に低いに違いない。

Thursday, July 30, 2015

On Hiroshima 広島ノート

日本は戦時中原爆研究をやっていた。陸軍の「ニ号研究」、海軍の「F研究」。「二号研究」は理化学研究所が中心となり行われ、予算が乏しく、とん挫したようであるが、私は「F研究」の存在を今回の産経報道(2015.7.26)で初めて知った。
私は、当時の陸海軍は、証拠が乏しいものの、マンハッタン計画と広島への原爆投下を知っていたと考えている。(長崎は当初福岡に落とされる予定だったが、天候不順で長崎に変更になったという経緯があり、これを当時の陸軍が予測できたか分からない)
問題は(1)なぜ日本は原爆研究をやったか、(2)なぜ海軍陸軍別々で研究をやったか、(3)なぜ原爆投下を国民に知らせ、避難させなかったか。広島は、 戦後社会でアメリカを超大国にする大きな儀式だった。さらに、結果として、皮肉にも大きな人体実験を米軍と帝国陸軍合同でやった格好となった。「原爆を持 てば国際社会で優位になれる」と陸軍は読み、実際その後の世界は「核抑止力」により秩序が立てられた。NPT(核不拡散条約)の協議も進んでいない。思え ば、広島という原体験こそが、皮肉にも核兵器のない社会を遠いおとぎ話にしてしまったかもしれない。

Then the Imperial Japan had nuclear weapon projects: Ni-Go project conducted by then the Army, F-Go project by then the Navy. These projects are not well informed, first of all, there is few reliable documents about them to consult.
Every year the day of the atomic bombing of Hiroshima is coming on, I am sure that then the Imperial Japan knew the Manhattan Project conducted by then the USA and the date when A bomb would be dropped in Hiroshima, though there's no any more reference that supports it.
My questions are, #1 why did the Imperial Japan try to develop an A bomb?, #2 why didn't then the Army and the Navy cooperate?, #3 why didn't the Navy inform the citizens of Hiroshima of being A bombed and let them run away?
Hiroshima can be said to become a ritual that made USA a political and military hegemony in the post-war world. Moreover, as a result, then the Army let USA conduct, rather cooperated with USA to conduct, a human experimentation in Hiroshima on how an A bomb destroys the human bodies.
Then the Army might read that the Imperial Japan would hold power if it had an A bomb, and it is right; Actually the power balance of the post-war world has been maintained by such a nuclear deterrence. Reflecting how less progress NPT (NonProliferation Treaty) is making, I think it is the very experience of Hiroshima that ironically made real world far away from the world free from nuclear weapons.

自民党・民主党

自民党さんは「カネを増やす」ことだけ考え、民主党さんは「カネをいかに(貧困層に)分けるか」しか考えていない。「カネを増やして分ける」ことが重要ですが、それを言ってる政党さんないです。政治的に難しいんですね、きっと。

The Liberal Democratic Party (LDP), Mr Abe's ruling party, claims income growth to be important, whereas the Democratic Party claims income distribution to be important. The important is, how to increase and divide income, but it must be politically very difficult to do.

Paid In Cash

Earnings don't have to be paid in cash; payment in kind is also fine. One month's worth of rice would be equal to my 3 hours' labor, and the right to have a date with a pretty girl would make me work for 5 hours. Money is a very good device in making the trades smooth, but may not be a good one in making our life happy. Payment in kind can also increase production and employment. To increase income is not only a solution to better life, but to satisfy our everyday life is also important.

男性は自信過剰

女性の給与が男性より低い。これは同じ職業、同じ学歴の男女間にも存在する。男性は女性より2倍自信過剰で、2倍出来高報酬を選ぶからだという。また、女 性の起業家ですら男性のそれよりも23%低い報酬を得ていて、女性はビジネス的な成功より社会貢献を重視、男性より仕事に満足しているという。さらに、男 性の方が長時間労働に従事していることに原因があるともいう。

The Day Of SNS SNSの時代

I cannot help feeling that it is not each individual but major televisions, newspapers, ad agencies, and political and business people that can control the information even though we are in an age of the Social Networking Services (SNS); Something can get labeled as what is convenient for them. The point is what and whom we think we should choose, not what and whom they choose. 

SNSの時代だとは言え、情報は個人でなく、テレビ、新聞、広告代理店、政財界が握っていることを思わずにはいられない。何かが都合よく決めつけられうるのだ。大事なのは、我々が誰を何を選ぶべきかであって、彼らが何を誰を選ぶのではない。

Freedom of Speech on Charlie Hebdo

Nowadays the freedom of speech and press is a little too louder than the freedom of not being insulted.

Milton Friedman of Capitalism and Freedom once said, "My freedom to move my fist must be limited by the proximity of your chin." French cartoonists' fist hit their chin. Their pens cannot help being another way of terrorism. Anyway I do not smile at this type of satire.

Aging Society

Young people are those who want to look adult while old people are those who want to look a little younger. They are usually busy talking around here about how to stay fit and young, which makes me feel that the population is gradually aging.

The Pen Is Mightier Than the Keyboard

プリンストン大・UCLAの研究によれば、パソコンより手書きの方が学習効果が高い。

The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking,Psychological Science June 2014 25: 1159-1168

セックスレス Sexless

セッ クスしてますか。読売新聞夕刊(2015.1.19)によれば、16~49歳の既婚者への調査によると、44.5%が1か月以上セックスしていない。原因 は、労働による疲労(週49時間以上の労働はセックスを減らす)、異性とのコミュニケーションが苦手な人が増加したと言う。自分も含めて、今は皆セックス レスだ。 

When did you have a sex last time? A recent study on married people aged 16-49 living in Japan caught my eye: Of them 44.5% have no sex for more than one month. The reasons are, tiredness from hard work (working more than 49 hours a week lessens sex), and more people dislike communicating with those of the opposite sex. Including me, many people have less sex. So what?

身代金 Ransom

In game theory, there's a question whether to pay ransom to a kidnapper. The official answer is, not to pay. The reason is, if your President or Prime Minister pays ransom to have you released, your neighbors and fellows will forever be targeted by terrorists for the purpose of ransom. But I wonder whether your President paying ransom will risk any other person in your country. For example, displaying kidnappers shot and their hideouts destroyed completely, or becoming unclear whether to pay ransom may not risk any other person's life. At any rate, the Japanese government has to solve the dilemma about their having two hostages released while punishing the Islamic State severely.

「ゲーム理論」では、「誘拐犯に身代金を払うか」という話がある。これには「身代金を払うな」という答えが存在する。いったん身代金を払うと、日本人は身 代金目的で世界中から狙われることになる。しかし、私は身代金を支払って人質を救うことが、将来の日本人の生命を脅かすとは限らないと考えている。例え ば、身代金誘拐の犯人をその場で射殺する、アジトを根絶する、もしくは身代金を支払ったかどうか明らかにしない、などすれば、日本人が狙われるリスクを減 らすことができるかもしれない。いずれにせよ、日本政府は邦人を解放することとイスラム国の実行犯を重刑に処すというジレンマを解かなければならない。

Don't Lose Your Sight

At school belonging to a collective body rather than being an individual, or cooperativeness rather than identity is long taught as of much importance. People generally applaud those belonging to big school and big company. Many scholars and congresspeople are now like full-time workers, and so are ISIL combatants.

The true fighters for poverty, freedom and happiness are quite rare in the world. The truly competent person is not a high-paid one, but one who makes a living with his or her own performance.Your good friends are not those who say just only good things to you, but can criticize you. Those who can tell difficult things are not smart, but can put them into something easy enough for honest children to understand are. Those who can make others enjoy themselves don't have a warm heart, but can enjoy themselves do. Those who are blamed a lot may be trustworthy, rather than those who blame a lot. Don't be part of a swarm. Don't lose sight of yourself.

学校では主体性よりも協調性が重んじられ、個人よりも組織に馴染むことを良しとする。本当の友とは、自分を痛烈に批判する人のこと。誕生日に「おめでとう」なんて言う人じゃない。

いい大学いい会社に勤めていることが褒められる。議員の先生も今や「正社員」感覚。本当の実力者は高給取りじゃなくて芸で食べていける人。小難しいこと ばかり言う人より、小学生にも分かる言葉で言う人がすごい。周りを楽しませる人より、楽しむ人がいい。文句を言う人より言われる人が信頼できる。ある意味 「都合のいい人」が多すぎる。つまらない。

英語 English

日 本では英語は必須科目である。なぜ英語を学ぶのか。英語の教科書には、アメリカ、カナダ、そしてオーストラリア人が登場する。つまり、彼らと会話するた め。つまり、白人社会と交流するためなのだ。自由、民主主義、テロと戦う、それが国際社会。それが常識。日本人は黄色いバナナ。肌は黄、中身は白。黄色の バナナからすると、中東社会が野蛮に見えてくる。テロは中東社会にとっても脅威であるが、それはただバナナになれなかった人の受け皿に過ぎない。

English is a required subject for all the Japanese. Why do they study English? In an English textbook, there are only Caucasian people from the US, Canada and Australia with whom they speak. That is, it's to talk with them. It's to get along with the Caucasian Western society, where freedom, democracy and the fight against terror are all taken for granted. Japanese are, so to speak, 'yellow bananas'; outside is yellow and inside white. For bananas, the Middle East looks so barbarian. The terror is also a great threat to the Middle East, but it just only prepares a room for those who have no clue to become 'bananas'.

On IS

イスラム国への空爆は果たしてイスラム国を撃退させるだろうか。第二次大戦中、当時の日本の帝国陸軍は戦略爆撃(空襲)が国民精神を鍛え上げると言って黙 認していた。シリアのアサド政権もイスラム国を黙認することで、反政府組織や有志連合の弱体化を狙っているかもしれない。空爆は帝国陸軍にとって都合が良 かったように、アサドやイスラム国にとっても都合が良いかもしれない。

Does bombing in Syria wipe out the Islamic States? In WW2, then the Imperial Army of Japan claimed that the US strategic bombing would build up the heart and soul of the Imperial Japanese and overlooked it. Assad of Syria might overlook the Islamic States and then struggle to weaken the anti-Assad and the Coalition of the willing. Bombing, as was convenient to the Imperial Army of Japan, may actually be convenient to the Assad and the Islamic States.

A Bitter School Day

When I was a student, there was a naughty guy at school who liked fighting. I could have beaten that guy while he was shitting at the bathroom, but I couldn't. If I had, I would have been beaten by his fellows. In addition, he could let no one fight with him by having fought with and won another who also liked fighting. The point is, not to fight is to make buddies and to fight much.

However, it may be possible for you not to fight by not fighting; Actually, that guy beat me and I didn't retaliate because I didn't think I could win him. Since then, he didn't beat me any more. No fight and no weapon sounds ideal and may lead peace, but at the same time that means that you should bear any attack at any time, and that you will be always in a danger of being beaten at any time.

中学生のころ、ケンカの強い奴がいた。ケンカの強い奴はババしてる間に(多くは学校でババしないが、そういう奴は堂々ババする。)金属バットで殴れば片付 く。しかし、そんなことすれば仲間が仕返しに来る。また、ケンカの強い奴は他の奴とケンカして勝率を上げることで、誰もケンカしなくなる。ポイントは、 「ケンカをしないためには、仲間を作り、ケンカする必要がある」のだ。

しかし、ケンカを買わないこともケンカをしないことになるかもしれない。実際、僕は そのケンカの強い奴に殴られた。勝てない事が分かっていたので耐えた(耐えられた)。以降そいつは僕の前から姿を消した。耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ こと。我慢できればケンカしなくていいが、ボコボコにされるリスクは常にある。

Tie

I think that tie is of no use though I always have it on while working. One midnight I missed the last train and I was at a loss. But soon one cab came to me and took me home. Then the driver said, "if you didn't wear a tie, I wouldn't take you up. The (drunken) men in working clothes are so rude." Certainly whom to take up late night may be fatal for taxi drivers. Tie is one of the things that seem of no use in modern society, but as long as many people judge by appearance it should be a necessary item for men to do good business.

日本は豊か Japan is Wealthy

少子化対策しなきゃ日本は益々停滞する、と言うけど、日本は労働人口(青の折れ線)が減っても、稼ぎであるGDP(赤の折れ線)はむしろ増えている。非正 規社員が増え、格差が拡大し、生活が苦しいと言うが、24時間働かずに済むし、安い賃金でもスマフォでテレビや音楽が楽しめ、パスタ、ワインや寿司が 1000円以内で手に入る。80年代のバブル期の人たちよりはるかに豊かで快適な世界にいるのも事実だ。日本経済に問題は存在しないのではないだろうか。

People say that the Japanese economy has been shrinking, but the macro data says the opposite: with the working population decreasing (the blue line) the economy has been bigger and bigger (the red line). Many of the Japanese people worry that the less full-time jobs, the larger the income gap between the rich and the poor. But now each of them can enjoy more leisure, music and movie anytime and anywhere with the smartphone, and can have pasta, wine and sushi at less than $10. It was unthinkable in the golden 1980s. Now Japan is so affluent that they might get frustrated. Any problem in the economy? Probably no.

卵巣がん

日本における卵巣癌の発生頻度は人口10万あたり5.7人、陽性率は70-80%。仮に陽性反応が出たとして卵巣がんである確率は0.0133%~0.0228%。アンジーの決断がベストかどうか分からないが、母方の両親が癌で亡くなっている小生には他人事ではない。

【補足】 P(卵巣癌)=0.000057,P(陽性|卵巣癌)=0.7~0.8,
P(陽性)=0.000057×0.7~0.8+0.999943×0.3~0.2=0.3~0.2,よって、
P(卵巣癌|陽性)=P(卵巣癌)×P(陽性|卵巣癌)÷P(陽性)=0.0133%~0.0228%

教養とは

あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、・・・「教養」というものの本質なのだ。東京大学 石井洋二郎

リーダー

この国に「強力なリーダーが必要だ」という声は依然根強い。そんなリーダー必要か。この国において「天皇」ほど強力なリーダーはいない。この国がちゃんと 安定していることが重要であって、誰が総理かは重要でない。この国が今まで平和なのは実は自由な経済活動でも優秀な官僚でもなく、日米安保と天皇の存在が 大きいように思う。

空堀 Karahori

大阪空堀(からほり)には古い家屋を利用したお店が多い。大型商業店舗の出店を規制する大店法の改正以降、大型ショッピングモールが次々誕生し、全国どこ も同じお店ばかり。大店法の改正は、地域独自の景観を犠牲にする形で、安くていい商品を消費者にもたらした。それゆえ、こういう風景はとても新鮮で心地よ く思ったりする。

There're many shops run in the old houses at Karahori, Osaka. Since the removal of the controls on large retail stores, there have many huge shopping malls appeared all over the country, and we feel like we could see the same stores everywhere. Such deregulation has provided us with cheaper and better-quality goods at the expense of the local landscape. That is why it's fresh and pleasant for me to walk and see such a nostalgic view.

You like Your Hometown?

My hometown is so insular that I don't like it. A couple of days ago I heard someone who once worked in my town saying, "I don't want to go back there,.." I agreed.

The press seem only to focus on the soundness of the local public finance while talking about the local town.

Rather, I feel it better to see how much favorable impression is given by the town. In Osaka the mayor struggles to unite its governmental activities to cut its burden and will take a vote. The problem is not to agree or not, but for such a reform to impress the residents favorably or not.

私の故郷は保守的な土地柄で正直好きじゃないが、私の故郷で昔働いたという人と話していた時も、「あそこ(私の故郷)へは二度と行きたくない」と言ってい た。共感した。地方を語るとき、財政や行政サービスについて論点が多い。ここで提案だが、「好感度」で自治体を評価してみてはどうだろうか。都構想も一度 やってみて、「好感度」が上がるかどうかで評価すべきだと思う。行政コストが高いか低いかはあまり関係ないと思うのだが。

Moss

"A rolling stone gathers no moss"; That means, people who are always moving can't cultivate or deepen their own knowledge and experience. However, such people never lack fresh idea and creativity.

Which is right? Anyway moss is always beautiful.

保守・リベラルは遺伝 Politica Atitude is Heritable

Political attitude is just as genetically heritable as height; The children of tall parents are likely to be tall, but nutrition and sleep etc. will also make them tall. The children of liberal parents are likely to be liberal, but education, companionship etc. will make them liberal. When it comes to politics, some will get so upset. If we recognize that it is just like a 'knee-jerk reaction', we can stay calm on it.

保守かリベラルか。それは遺伝で決まるようだが、身長の高い親の子は身長が高いけど、栄養や睡眠なども身長を高くするように、親がどういう意見を持ち、何 を見て育ち、どういう人付き合いをしてきたかにも大きく影響する。政治になると感情的になるのは「条件反射」みたいなものだと理解できれば、もっと冷静でいられるだろう。

派遣法

派遣法改正で「非正規が増える」というのは間違っている。製造業が低開発国へ移ったので、国内の製造ラインと雇用を縮小した。長期間無期限の「正社員」は 企業に大きな足枷となった。そこで「派遣・非正規」の需要が増えた。派遣法ではなく、時代が非正規を求めた。これからは「有期の非正規社員」として、自営 業者みたいに確定申告すればよい。わずらわしい社内の人間関係から解放され、どれだけ税金払ってるか思い知らされ、我々の政治意識も変わると思う。

On Market Economy

Modern (capitalist) economy is called "market" economy. A visitor from Mars sees the Earth from space and says, "Firms show as solid green areas, while markets show as red lines, so the economy appears as a spider's web of red lines and green areas...our Martian would not describe it as a "network of red lines connecting green spots" but as 'large green areas interconnected by red lines'" pp.168, John McMillan, Reinventing the Bazaar,

Well, market economy is not decentralized itself, but rather dominated by a large number of centrally planning agents, firms and organizations.

Nationality 国民性

「国民性」という言葉がおかしいのは、なんでも説明ができてしまうからだ。「彼が怒りっぽいのは韓国人だから」 「彼が女好きなのはイタリア人だから」 「彼女は借金を返さないのは、ギリシャ人だから」 これは人種差別以外の何物でもない。

Ethnicity is such a weird word that it seems to tell anything; He is always upset because he is a Korean. He likes girls because he is an Italian. She doesn't repay her debt because she is a Greek..Well,.. it's nothing but racism

フェイスブックのお友達 Friends in Facebook

facebookでの「友達」とは「通りすがりの人」のように思います。職場や親しい友を加えたらダメな気がします。

People are reluctant to post a comment so frequently because they add their real friends, coworkers, bosses and ex-girlfriends' friends in an integrated way. The way we talk to our friends is quite different from that we talk to bosses. I make it a rule not to add my neighbors as 'friend' in facebook. Facebook friends are just like "passers-by" whom I saw in my life or in facebook.

戦後観 Post-War View

At the end of World War II, the victors were more interested in bringing Germany and Japan into the community of nations than in seeking retribution for past sins. (Greg Mankiw, NY Times, July 17,2015) Greg is right and this is the common understanding of history. I doubt the countries and leaders (the victors) asking for contrition.

第二次大戦後、戦勝国はドイツ、日本に過去の誤りを謝罪させるよりも、国際社会に溶け込ませることにより関心があった。マンキュー(ハーバード大教授)先生は正しいと思うし、これが共通認識だ。私は過去の誤りを正そうする国家とリーダー(戦勝国)に疑問を持っている。

What is 'In Practice'? 実用とは何か

国 立大学の文系廃止が議論されている。つまり「実用」ばかりが要求されるのだが、「実用」とは一体誰が決めるのか。ベンジャミン・フランクリンが生きた18 世紀では、「電気」は「無用の長物」だった。経済の論理で考えても、人の育成や技術開発には不確実性が伴い、政府機関が投資をし、不確実性を分散すること が望ましい。文系廃止は全く理解不能な愚策である。

Government is now trying to prevent human and social science, which they see as "white elephant", from being taught at national universities. Who on earth decides which science is of use? In the 18th century when Benjamin Franklin was alive, electricity was at least of no use. From the viewpoint of economics, there's always huge uncertainty in educating students and developing new technologies, and thus it would be better for government to fund these activities and to help to break up such uncertainty. Human and social science sounds like they are of no use, but it is also clear that no one knows whether it is useless.

Sunday, January 04, 2015

A Competitive Society and Altruism

A competitive society, some people say, makes the people so selfish that they can survive it. However, Ito, Kubota, and Otake (2014) claims, anti-competitive school practice is rather likely to make the students 'selfish' and 'uncooperative'; Competitive society rather makes people more altruistic and cooperative.

競争社会は、人を生き残りをかけるために利己的にさせる。しかし、伊藤・窪田・大竹(2014)によれば、非競争的な教育こそ生徒を利己的に非協力的にさせるという。競争社会こそむしろ人を利他的に協力的にさせるのだ。

ブランド店

先日、ジョルジオ・アルマーニの店でスーツを試着した。すると店員さんが、「お客様、よくお似合いでらっしゃいます!」、「お客様はスタイルがいいので、お客様こそアルマーニですわ。」 これは気持ちがいい。落ち込んだときは、ブランド店へ行けばいいかもしれない。

A couple of days ago I tried suits on at Giorgio Armani, and its salesclerk smiled and said, "You look good! ", "You have a nice style and you're a nice guy. Armani is best for you!" I felt like a room without a roof. If you're depressed, it might be good to visit brand stores.

大学の問題点

池田氏のG大学・L大学の話。グローバルのG、ローカルのLであるが、G大学はアカデミックな教育をし、L大学は職業訓練校。10年以上前に聞いた「研究大学」と「教養大学」という話とほぼ同じだ。
 
しかし、「大学を作りすぎた」という話がないのは不思議だ。戦後、駅弁大学、つまり和歌山大学みたいな国立大を作ったが、大学数が急速に増えたのは90年代以降で、さらに学部を増やし、補助金を与えている現状だ。

観光学、地域創造学、国際環境学、総合政策学など既存の学部を合わせたものに税金を突っ込む。新手の交付金目当て、「おれおれ詐欺」ならぬ「学学(がくがく)詐欺」にも思える。それよりも初等教育に金遣え、とはすごく正しい。

同時に、「大学に実務教育を」とは矛盾した議論だ。「実務」は職場で、「教養・哲学」は大学で学ぶべきもの。大学の役割と税金の使い道を再考すべきだ。

A Japanese Life

Seeing some people sleeping in the train, I wonder what a safe country Japan is, and at the same time how long they can't sleep at home; Many are working until late at night and their children are waiting at home for their dad and mom to come back.

電車の中で爆睡する人を見ては、日本の治安の良さを思うと同時に、家でしっかり睡眠がとれないものかとも思う。多くの人が激務の中で、夜遅くまで働いてい る。多くの子どもたちも、保育園や学童で、または誰もいない家で、パパやママの帰りを待っている。

Getting out of such a vicious spiral, Japanese may be able to regain a real heart; More or less, they can spend more time with their family and friends and increase their quality of life, which will let them realize what they live for.

そんな悪循環をやめれば、本来の心が戻ってくるかもしれない。少なくとも、家族や大切な人と過ごす時間を増やして個人の質的生活水準を上げることにより、 何のために生きるのかがはっきり見えてくるのではないだろうか。

People Choose When to Die?

One economist, who I think was Gary Becker of U of Chicago, once said, more or less people choose when to die; Heavy smokers or gangsters can be said to choose to die younger, otherwise people don't choose such careers.

However, I don't think people are so rational to know the ends, and it's a little surprise to hear that there's one who chooses the date to die. Honestly, no matter what reason she had, I cannot feel happy to think she must have had another choice to make; I do not think that her decision is true for those who are suffering from the same disease and having the same fate as she had.

金券ショップとベルトラン競争

金券ショップの切符どこから仕入れるんだろう? クレジットカードは利用限度があるから、カードで切符を買って、その切符を売って現金化する。繁華街のテ ナントに中国韓国系のマッサージ店が入ってくる。いったん入居するとどんどん同業他店が入ってくる。そうすると価格競争(ベルトラン競争)が生まれそうで あるが、特別なサービスを付けてそれを回避している。

SNS and What to Choose

I cannot help feeling that it is not each individual but major televisions, newspapers, ad agencies, and political and business people that can control the information even though we are in an age of the Social Networking Services (SNS); Something can get labeled as what is convenient for them. The point is what and whom we think we should choose, not what and whom they choose. 

SNSの時代だとは言え、情報は個人でなく、テレビ、新聞、広告代理店、政財界が握っていることを思わずにはいられない。何かが都合よく決めつけられうるのだ。大事なのは、我々が誰を何を選ぶべきかであって、彼らが何を誰を選ぶのではない。

男女の収入格差

女性の給与が男性より低い。

これは同じ職業、同じ学歴の男女間にも存在する。

男性は女性より2倍自信過剰で、2倍出来高報酬を選ぶからだという。また、女 性の起業家ですら男性のそれよりも23%低い報酬を得ていて、女性はビジネス的な成功より社会貢献を重視、男性より仕事に満足しているという。さらに、男 性の方が長時間労働に従事していることに原因があるともいう。

Money and Life

Earnings don't have to be paid in cash; payment in kind is also fine. One month's worth of rice would be equal to my 3 hours' labor, and the right to have a date with a pretty girl would make me work for 5 hours.

Money is a very good device in making the trades smooth, but may not be a good one in making our life happy. Payment in kind can also increase production and employment. To increase income is not only a solution to better life, but to satisfy our everyday life is also important.

自民党と民主党

自民党さんは「カネを増やす」ことだけ考え、民主党さんは「カネをいかに(貧困層に)分けるか」しか考えていない。「カネを増やして分ける」ことが重要ですが、それを言ってる政党さんないです。政治的に難しいんですね、きっと。

The Liberal Democratic Party (LDP), Mr Abe's ruling party, claims income growth to be important, whereas the Democratic Party claims income distribution to be important. The important is, how to increase and divide income, but it must be politically very difficult to do.

黒人問題

10代の黒人は10代の白人に比べ21倍警官に殺されている。しかし同時に、10代の黒人は10代の白人に比べて9倍殺人を犯すので、正しくは「10代の黒人は10代の白人に比べ2.3(21÷9)倍警官に殺されている」となる。

人間関係

人から好かれるかどうか気にしなくても、という人がいるが、そこを気にするのは人情だ。最近学校で「コミュニケーション能力」が教えられているが、それは 「表面的な人間関係」をうまく構築することだ。それも必要なことだと思う。人間関係は家族、恋人、友人だけじゃなく、顧客、同僚、先生、取引先もある。ど れが重要なのかということだけれども、いろんな関係がある以上、むしろうまく適応する必要がある。「表面的」な関係もまた重要な気がする。

Some people suggest that we should not care whether we are liked or not in our community, but we people generally care it.

Recently many schools have taught 'communication skill' whose aim is to build a good 'surface' relationship between us. I think it is also necessary. Not only are there our family, boy/girl friends, and friends, but also our customers, clients, cowokers, and teachers in our social relationships.

Which is more important does matter, but as long as we live in a wide variety of social relationships, we need rather to adapt ourselves to the relationships we live in; A surface relationship is also important.

エルドガン大統領

トルコのエルドガン大統領の発言が女性の怒りを買っている。「女性と男性を同じ職業に就かせることはできない。男女の性質が違うんだからそれは自然に反し ている。」

エルドガン氏の言には一理ある。

女性が平等であることとは、男性のように行動することではない。男女はその性質において同じではなく、社会にお いて同じように扱われるべきだということに過ぎない。

しかしながら、女性には子を産まない権利があってもよく、男性のように働く女性がいてもよい。私は最 近、人は女性または男性として生まれるのではなく、女性または男性になる、というのを聞いた。その通りだと思う。元々の自分の性を嫌い、女装男装する人も いる。大事なのは、そういう人の権利についても同様に考えることだと思う。

The speech of Turkey's Erdogan made women angry.

He said, "You cannot bring women and men into equal positions; that is against nature because their nature is different." I understand Mr Erdogan a little bit: For women to be equal to men is not to behave like men. Women and men are not the same in nature, but they should be no more than treated the same in the society.

However, women can be allowed the right not to bear a child, and, of course, some of them can work like men.

Recently I have heard that people are not born as women or men, but become women or men. I think it's true. Some of them hate their own biological gender and then wear and behave like the other sex. The important thing is, I guess, to think about the rights of such people as well.

不況対策について

「不況対策って何があるか」とよく聞かれる。「変動相場制では金融政策が有効」だ。

逆に、カシャップ・星氏らが言うように、「不況対策はかえっていい企業 をダメにする」効果もありうる。

選挙のための公共事業や、経団連を喜ばせる円安策よりも、失業された人への給付など転職支援策をもっと充実した方がよいと 考える。

What should be done in the downturn? In the floating rate system, monetary expansion works well, but Hoshi and Kashyap say that it spoils good business. It sounds right and I think that helping the unemployed change jobs should be more necessary than public spending for the next election, or depreciation of the currency for manufacturers and business.

GDP and Real Life

GDP is the total income produced domestically and 'two-quarter continual decline in GDP' means 'recession.'

I've heard Japan is in recession since I was an elementary pupil, 20 years ago, but we can still eat. As I hear that it's getting difficult to make a living, I feel the economic value doesn't necessarily mean our life and happiness.

大学の授業料

大学の授業料は高い。10年前国公立大では年間授業料49万円だった。今は年間授業料53万円。この10年で8%伸び、消費者物価指数は5%下落した。授 業料は10年で13%上昇した。私大はもともと高いがこの10年で9%上昇。同じ先生が同じ教科書で同じ内容を教えているとすれば、今の学生、親御さんの 満足度は明らかに減少している。

10 years ago the annual tuition of public university is around US$4,900 ($1=100yen).

Now it is $5,300 and has been growing at 8% whereas the prices 5% declining. That is, the tuition is 13% up.

In contrast, the tuition of private university has been growing at 9% for these 10 years. Considering the same professors teaching the same thing with the same textbook, the welfare of the students is absolutely decreasing.

ティンバーゲンの定理

日本の最大の貿易相手国は中国!アメリカは2位。韓国は3位。4位はオーストラリア。

中韓は日本貿易の4分の1を占めます。貿易理論では「ティンバーゲン の定理」があり、「貿易数量は距離の2乗に反比例する」、つまり「近い国と多く貿易する」。

中韓とは切っても切れない関係だと実感します。

データ(1)円ベースhttp://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/data/y3.pdf
データ(2)ドルベースhttp://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/trade/ 

Which country is the Japan's biggest trading partner?

China! USA is No 2 and Korea No 3. China and Korea contribute to one quarter of the Japan's international trade volume.

Tinbergen's Theorem claims, the trade volume is inversely proportional to the squared distance between the countries.

That means, a country trades more with nearer countries. It can be said that Japan cannot exist without China and Korea.

Midterm Election and Obama's Challenge

One American guy said to me, "don't talk about a neighbor's garden."

Well, I follow him and don't talk about the American politics.

I think Mr Obama did seek another way the former Presidents didn't take; Praha's speech of anti-nuke weaponry, Obama universal health care, and less military intervention, which all sounds less 'American-like'.

I think this is the way the world is changing, and many American people seems not able to follow the way. Anyway, I will keep an eye on what Mr Obama will do next.

Facebook and Sex

Have you had a sex with your partner recently? A couple of days ago I heard a neuroscientist saying that when we post photos or comments in facebook we feel as happy as when we have a sex. I don't know if it's true, but I haven't been interested in sex recently...

Islamic State and Bombing

Some recent cases unfortunately make Muslim look dangerous, but is it just because many of us don't know well what Muslim are? Rather we just see only part of the acts of the people who name themselves Muslim, don't we?

It seems right to bomb IS, Syria and Iraq because we can see many killed in youtube. However, we have no clue to know what truly happens there and moreover we have no reason to intervene the matter.

At any rate, I don't want the tax revenue to be used for bombing whose targets we really don't know.

On Empowering Women

Ms Obuchi and Ms Matsushima, both of whom were the symbols of empowering women under the 2nd Abe Administration, resigned from office. Promoting women's participation in the society is one of Mr Abe's policies, but does it mean that many women in suit with business bag work outside? I think that the point is somewhere else:

Because women do housework and men work outside doesn't always mean that women are of low social status, whereas because the number of women is almost the same as that of men in the Congress doesn't necessarily mean that women are of high social status and treated more equally.

The point is that people having the same ability, legal right and qualification should be treated the same, regardless of age, sex and race; It should not be because you're a woman that you have a degree of PhD or are the member of the Congress.

Mr Abe struggles to increase women in the Congress, the government and companies, but it can unavoidably be seen as wiping out his manly and hawkish image and aiming for women's vote only.

Malala and the Article 9th

Considering the 2014 Nobel Peace Prize for Ms.Malala, I am sure that keeping the world peace costs much.

In contrast, the Article 9th, disarmament of Japan, which was nominated for the 2014 Peace Prize, is the outcome of the dealing with the US; Then the US disarmed Japan, instead promised Japan to protect its land and the Emperor system.

This is, what is called, the Yoshida Doctorine, and Japan could become the 3rd largest country in the world thereafter without paying any cost of security.

Some Japanese claim that the Article 9th is worth the prize, but I doubt them and I would say to such people that there are the dead in the battlefields under the Article 9th.

マララさんの受賞から思うのは、「平和には大きな代償 (The Price of Peace) が必要だ」ということ。日本はその代償を免れる条件として、日本は「九条」を受け入れた。これがいわゆる、吉田ドクトリン(Yoshida Doctorine)というもので、「九条」は「日本の再軍備」を警戒したアメリカとの取引であり、日本は天皇制を維持すること、安保条約で守ってもらう ことを前提にこれを飲んだ。お陰で日本は超大国になれた。「九条」はいわばアメリカに『武装はしないから、代わりに安保で守ってね』という「取引」に過ぎ なかった。

Taro Impossibility Theorem

Men usually like tactful, gentle, sensible, skinny and charming ladies, but there's no such one in the world.

As there's no perfect democracy in the world, there's no perfect woman or man in the world; It can be one of impossibility theorems.

Proof? To be continued..

Tuesday, October 14, 2014

我が経済学研究(2)

根岸隆『ミクロ経済学講義』を30歳にして始めて読んだ。いい本であるが、ちゃんと読み込まないと書いてあることが理解できない。

過去、ミクロ経済学の教科書として、

1)西村清彦氏『経済学のための最適化理論入門』
2)成生達彦氏『ミクロ経済学』
3)岸本哲也・吹春俊隆氏『ミクロ経済学』
4)Dixit,Optimization in Economic Theory
5)西村和雄氏『ミクロ経済学』(東洋経済)

を読んできたが、上記のテキストに書かれていることは全てVarian,Microeconomic Analysis
に書いてある。よって、現在は上記5冊は全て古本屋へ売却し、Varian(1993)を中心にミクロの勉強・復習をしている。

一方で、マクロ経済学はRomer(2006)を辞書的に使うのみで、論文や講義資料を読み漁っているのが現状である。斎藤誠 『新しいマクロ経済学』(ただし、前の版、1996版)はいい本だが、研究本としては使えない。

加藤涼氏『現代マクロ経済学入門』(2006)は薄くて読みやすいのであるが、今後の研究資料としてはあまり使えないと思い売却した。

ミクロ・マクロ経済学は現代経済学の要であり、今だよくわかっていない項目もあるが、経済を見据える上では強力な道具であることには変わりない。更なる経済学研究にまい進していきたい。

現在の研究テーマも基本的には「ミクロの意思決定とマクロ現象の関連性」ということになる。

過去は国際金融を勉強しようと考えていたが、これはマクロ経済学の周辺領域であると考えるようになり、マクロを勉強しなおそうとRamseyモデルからやり 直した。やがて、マクロ経済学を勉強するうちにこれは「(動学的な)一般均衡理論の応用」だと考えるようになり、ミクロ経済学を消費者⇒生産者⇒市場均衡 と順番に勉強しなおした。

そして、ミクロ経済学は「最適化」と「均衡」という2つの要素で構成されていると考え、最適化理論 (Maximum Principle&Dynamic Programming)を勉強し始めた。これら現代経済学の根幹(最適化と均衡)について、簡潔に触れているのがSchelling(1978)本だと 思うようになった。

これはゲーム理論の書籍ではなく、経済と社会現象の見方を論じた社会科学の経典である。もうすぐ日本語訳が出るらしいが、何故30年もの間 翻訳されていない。

個々人の行動の変化がマクロ経済にどのような影響 を与えるのかを、学部ミクロ&マクロの知識でも読み解けるぐらいに簡潔にまとめていきたいし、現実に起こっている経済の均衡を理解するためには社会学や心理学といった周辺領域をも統合化しないといけない。

少しでも現実社会への視座を広げようとするとき、古いテーマを洗い出すことが必要だと考えている。いまはそのための貴重な時間である。

Tuesday, October 07, 2014

古典派:3つの「中立命題」

古典派理論には「中立命題」がある。マクロ経済学ではいずれも重要な命題で、ケインズ理論との違いを押さえておく上で重要だ。

(1)貨幣の中立命題

これは「古典派の二分法」、「自然率仮説」とも称され、金融緩和策は市場が清算していれば物価を引き上げるのみ、という貨幣数量説の命題である。貨幣はマクロ経済の実物的要素である消費、生産や雇用に影響しないという説である。

イギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームがこの学説の由来とされるが、ヒューム自身この中立性を厳格には支持していない。

もし市場が清算していない、物価が硬直的な「短期経済」の下では、金融緩和は貨幣の実質価値を引き下げ、実物的要素である消費や投資支出を増やし、GDPと雇用を自然率まで増加させることができる。

しかし、いったん経済が自然率、完全雇用の水準に達すれば、市場は清算して、需給が一致し、金融緩和は物価を引き上げはすれど、実物的要素を増やさない。よって、金融政策は効果がない、というもの。現代マクロ経済学では基本的な命題である。


(2)公債の中立命題

これは「リカード・バローの等価定理」とも称され、政府による財政政策は経済活動に中立的という命題である。政府が公債を発行して公共事業を行おうが、増税により行おうが経済の実物的要素である消費、生産や雇用に影響しないという説である。

イギリスの経済学者・政治家であったデイヴィッド・リカードがこの学説の由来とされ、1970年代にロバート・バロー博士がこの中立命題について論文を書き、復活させた。

政府が公債を発行して公共事業を行なうと、人々は将来の増税に備えるために、公共事業によって得た所得を使わずに貯めておく。結果これによりGDPや雇用は、何もしなかった時と変わらず、経済には全く影響しないのである。

実証研究では、この仮説を棄却する研究があり、いまだに論争は絶えない。財政政策が経済活動に影響しないためには、①人々は(世代を超えて)長い視点で消費活動をしている、②所得・予算に制約がない、などの条件が必要となってくる。

多くの人は、近視眼的に物事を考え、予算以上の消費活動をすることもある。いずれにせよ、ケインズ的な財政政策には効果がないという、これも基礎的な命題である。


(3)モディリアーニ・ミラー命題

これは「MM定理」とも称され、資本市場が完全であり、法人税などの制度上の歪みがなければ、企業が資本を株式発行で得ようが社債発行で得ようが、企業価値には影響しないという説である。

これはファイナンスの命題でもあるが、どのような形で資本調達しても企業の経営には変わりがないという、企業版「リカード・バローの等価命題」と言える。

しかし、実際には資本調達によっては税制上の優遇策があったりなかったりとMM命題が成り立たないケースが大いに考えられる。

ケインズ経済学とルーカス批判

経済学の学部の講義では、特にマクロ経済学での「ケインズ派」と「古典派」の区分が必要である。

現在のマクロ経済学ではそれぞれ「短期」と「長期」、「ミクロ経済学的基礎づけなし」と「あり」と言い、「ケインズ派」とか「古典派」とか言わなくなってきた。


「ケインズ派」と「古典派」の違い

そもそも、この違いは何処から来るものか。1つは「時間軸」であると言える。


                 過去       現在        未来

(1)ケインズ派       減税実施 ⇒  GDP↑

(2)古典派                    GDP↑  ⇐ 減税実施予定


従来のケインズ経済学では、過去に行った経済政策が現在の可処分所得や金利を変化させ、消費・投資支出に影響を与え、結果GDPや雇用、物価に影響する、いわゆる「適応的」な反応として、マクロ経済を見ている。

これに対して、古典派では将来に行われると予想される経済政策が現在の経済に影響を与えるという「前向き(フォワード・ルッキング)」な経済観を持っていると言える。

まさにこれを象徴する考え方として「ルーカス批判」なるものがある。ロバート・ルーカス博士が1970年代の論文で、「景気予測は現在の人々の将来予想を適切に反映せず、景気予測に基づく経済政策の実施は有害無益だ」とする趣旨の主張を展開した。

現在のマクロ経済学はこの「ルーカス批判」を受けて、人々の将来予想を反映させると経済政策の影響がどう変わるのかという、ケインズ経済学とは別の観点からのアプローチを可能にした。

いわゆる「合理的期待」という発想である。これにより、ケインズ経済学で無視されてきた①財政金融政策の持つ問題点、②人々の生活水準(厚生)に与える影響、③より効果的な政策ルール設計、について広範に分析する術を獲得した。

短期・長期

「長期」と「短期」の違いを指摘することも重要ではあるが、固定的要素を含む、すなわち物価が硬直的、変動しない「短期」の経済において行う政策と、物価が伸縮的で速やかに市場が清算される「長期」の経済において行う政策との違いも、上記の時間軸のとり方で説明できる。

すなわち、現在の物価が将来経済の物価を反映しているという「前向きな」想定を行うと、政策効果の考え方がケインズ派のそれと異なるのだ。

現在の物価が将来の物価、すなわち将来の均衡を反映していると、市場はすぐさま清算、需給は一致し、ケインズ的な総需要拡大策はGDPを増やさず、自然率(完全雇用時)GDPが実現する。

このときはもはや、需要政策でGDPや雇用を変動させることはできず、労働市場を流動化する、職業教育を充実させるなどの「成長政策」が重要となる。

実際、このケインズ派と古典派、どちらが正しいのか気になるところではあるが、どちらが正しいというよりも、「時間軸ひとつで経済政策の効果が異なるという視点を与えている」点に価値を見出すべきかと思う。