Tuesday, January 22, 2013

野口悠紀雄氏のインフレターゲット論

インフレターゲットで経済活性化はできない、という野口悠紀雄氏。

第一は、「実質利子率の低下を通じて投資支出が増加する」というものだ。この考えの基礎となっているのは、次の式だ。
名目金利=実質金利+物価上昇率
最後の項の物価上昇率は、将来の予想値(期待値)である。そして、これが高まると、実質金利が低下し、投資が増えるというのである。

ここまでの文言はよい。しかし問題は次だ。


確かに、住宅ローンなどを固定金利で契約している場合には、左辺が固定されているので、物価上昇率(の予測値)が高くなれば実質金利は低下する。しかし、このローンは過去になされた住宅建設に係わるものなので、実質金利が低下しても、それで投資が増えるわけではない。

「実質利子率が低下して投資支出が増加する」ことはない。小生はこのような文言を初めて聞いた。

投資というのは、将来の消費活動に向けて行われるいわば蓄え(貯蓄)のことである。

これは一般に実質利子率の変動を受けて変化する。

仮に物価の上昇期待が生じれば、その時点で実質利子率は変化するが、ローンの額、またはそれによって現時点までに行われた住宅の建設戸数は変化しない。

しかし、実質利子率が変化した時点において、「家でも建てるか」という需要が、ローン返済の実質負担の低下(これが「実質利子率の低下」という意味)により出てくる。

実際、物価が上がらないうちに家を買おうという需要が増える。

「実質利子率が低下して投資支出が増加する」というのは、過去の時点でのすでに起こった需要ではなく、「今期から来期にかけて」起こる需要の話である。

しかし、野口氏は続けて、

「デフレが予想されると需要が減る」というのも、「インフレ期待が高まれば支出が増える」というのも、誤りだ。インフレ期待の上昇に合わせて名目金利が上昇するので、いつ買っても実質的に同じものが買えるのである

確かに、IMFの国際的な比較統計を見ても、インフレと名目利子率はプラスに相関し、ほぼ1対1に対応している(マンキューのマクロ経済学に載っている)。 しかしながら、固定金利であれば名目利子率は頻繁に変更されない。よって、実質利子率は名目利子率が変更される期間までに変化する。

実質利子率は究極的には経済の生産性により決まってくるが、名目利子率が固定していれば、インフレ期待が高まることにより低下する。

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