Wednesday, August 22, 2012

デフレは不況の原因か(2)

「デフレは不況の原因ではない」とするデフレと不況の因果関係論について、「デフレは不況の原因である」を仮に真とすると、

命題1:「物価が下がると名目賃金も同じだけ下がるので(マークアップ率=1)、実質賃金は変わ
らない。だから不況は起こらない」

という論を論破することはできない。これが「反例」
になっているので、違うのではないかという「背理法」が成立する。

「実質賃金の下落の原因がデフレ」という人は、じゃあ名目賃金はなぜ下落するのか。答えは「物価が下がるから(デフレ)」。じゃあ、

物価下落率=名目賃金下落率

なら「実質賃金一定」なりますよね。いやいや、実質賃金
の下落は「物価の下落率よりも名目賃金下落率の方が大きい」から起こった。では、
名目賃金はなぜ大きく下がったのか。物価がさがったから。じゃあ「物価下落率=名目賃金下落率」? 
なんか、おかしいことが起こっています。

デフレが不況の原因か?

デフレが不況の原因だという。これは本当か?


ここに「風呂桶」がある。この中に水を入れたら、風呂桶の水位が上がる。水を入れすぎると風呂桶から水がやがてあふれ出る。さあ、何の話?風呂桶の話?

いいえ、風呂桶は「経済の生産能力」、水は「経済の総需要」、そして水位は「インフレ率」。不況とはいわば風呂桶の「水不足」に該当する。「水不足」、すなわちインフレを解消するには、「水を加えればよい」となる。「水位を上げろ」(インフレにしろ)でもいいが、「水位を上げる」には「水を入れる」(需要を創出する)ことがまず必要である。
 
すなわち、「水を入れる」ことが「水位を上げる」ための必要条件になる。
 
そう、需要を増やすことがインフレになるための必要条件となる。
 
では、「デフレが不況の原因」という主張をこの「風呂桶」の議論で見てみよう。
先ほどの文章を逆さにすればよい。「水を入れる」ためには「水位を上げる」ことがまず必要である。んんん?

実は、「水を入れる」ことは「水位を上げる」ための十分条件とはならない。なぜか? 風呂桶を小さくすれば、水位を上げることができるからだ。

つまり、デフレが不況の原因というなら、「水不足は水位が低いのが原因」と言っているのと同じである。ダムの水位が低いのは「降水量が低いから」と考えるのが普通であるが、「ダムの水不足」は「ダムの水位が低いから」だと、デフレが不況の原因だと主張する人は言う。
 
ダムの水位を上げるに は、別に「水を入れ」なくてよい。需要を増やさなくてもよい。「ダムを小さく」してもよいだろう。そう、経済の需要が一定なら、経済の生産能力を小さくす れば(石油コンビナートを破壊するなど)、「水位は上がる」(インフレになる)。

デフレが不況の原因。ならばその対策は簡単。デフレを解消すればよい。そのためには風呂桶を小さく(生産能力を破壊)してもよい。さあ、日本経済の復活のために、臨海工業地域を、日本の生産力を破壊しよう。あなたはこの結論に賛成するだろうか??