Tuesday, October 14, 2014

我が経済学研究(2)

根岸隆『ミクロ経済学講義』を30歳にして始めて読んだ。いい本であるが、ちゃんと読み込まないと書いてあることが理解できない。

過去、ミクロ経済学の教科書として、

1)西村清彦氏『経済学のための最適化理論入門』
2)成生達彦氏『ミクロ経済学』
3)岸本哲也・吹春俊隆氏『ミクロ経済学』
4)Dixit,Optimization in Economic Theory
5)西村和雄氏『ミクロ経済学』(東洋経済)

を読んできたが、上記のテキストに書かれていることは全てVarian,Microeconomic Analysis
に書いてある。よって、現在は上記5冊は全て古本屋へ売却し、Varian(1993)を中心にミクロの勉強・復習をしている。

一方で、マクロ経済学はRomer(2006)を辞書的に使うのみで、論文や講義資料を読み漁っているのが現状である。斎藤誠 『新しいマクロ経済学』(ただし、前の版、1996版)はいい本だが、研究本としては使えない。

加藤涼氏『現代マクロ経済学入門』(2006)は薄くて読みやすいのであるが、今後の研究資料としてはあまり使えないと思い売却した。

ミクロ・マクロ経済学は現代経済学の要であり、今だよくわかっていない項目もあるが、経済を見据える上では強力な道具であることには変わりない。更なる経済学研究にまい進していきたい。

現在の研究テーマも基本的には「ミクロの意思決定とマクロ現象の関連性」ということになる。

過去は国際金融を勉強しようと考えていたが、これはマクロ経済学の周辺領域であると考えるようになり、マクロを勉強しなおそうとRamseyモデルからやり 直した。やがて、マクロ経済学を勉強するうちにこれは「(動学的な)一般均衡理論の応用」だと考えるようになり、ミクロ経済学を消費者⇒生産者⇒市場均衡 と順番に勉強しなおした。

そして、ミクロ経済学は「最適化」と「均衡」という2つの要素で構成されていると考え、最適化理論 (Maximum Principle&Dynamic Programming)を勉強し始めた。これら現代経済学の根幹(最適化と均衡)について、簡潔に触れているのがSchelling(1978)本だと 思うようになった。

これはゲーム理論の書籍ではなく、経済と社会現象の見方を論じた社会科学の経典である。もうすぐ日本語訳が出るらしいが、何故30年もの間 翻訳されていない。

個々人の行動の変化がマクロ経済にどのような影響 を与えるのかを、学部ミクロ&マクロの知識でも読み解けるぐらいに簡潔にまとめていきたいし、現実に起こっている経済の均衡を理解するためには社会学や心理学といった周辺領域をも統合化しないといけない。

少しでも現実社会への視座を広げようとするとき、古いテーマを洗い出すことが必要だと考えている。いまはそのための貴重な時間である。

Tuesday, October 07, 2014

古典派:3つの「中立命題」

古典派理論には「中立命題」がある。マクロ経済学ではいずれも重要な命題で、ケインズ理論との違いを押さえておく上で重要だ。

(1)貨幣の中立命題

これは「古典派の二分法」、「自然率仮説」とも称され、金融緩和策は市場が清算していれば物価を引き上げるのみ、という貨幣数量説の命題である。貨幣はマクロ経済の実物的要素である消費、生産や雇用に影響しないという説である。

イギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームがこの学説の由来とされるが、ヒューム自身この中立性を厳格には支持していない。

もし市場が清算していない、物価が硬直的な「短期経済」の下では、金融緩和は貨幣の実質価値を引き下げ、実物的要素である消費や投資支出を増やし、GDPと雇用を自然率まで増加させることができる。

しかし、いったん経済が自然率、完全雇用の水準に達すれば、市場は清算して、需給が一致し、金融緩和は物価を引き上げはすれど、実物的要素を増やさない。よって、金融政策は効果がない、というもの。現代マクロ経済学では基本的な命題である。


(2)公債の中立命題

これは「リカード・バローの等価定理」とも称され、政府による財政政策は経済活動に中立的という命題である。政府が公債を発行して公共事業を行おうが、増税により行おうが経済の実物的要素である消費、生産や雇用に影響しないという説である。

イギリスの経済学者・政治家であったデイヴィッド・リカードがこの学説の由来とされ、1970年代にロバート・バロー博士がこの中立命題について論文を書き、復活させた。

政府が公債を発行して公共事業を行なうと、人々は将来の増税に備えるために、公共事業によって得た所得を使わずに貯めておく。結果これによりGDPや雇用は、何もしなかった時と変わらず、経済には全く影響しないのである。

実証研究では、この仮説を棄却する研究があり、いまだに論争は絶えない。財政政策が経済活動に影響しないためには、①人々は(世代を超えて)長い視点で消費活動をしている、②所得・予算に制約がない、などの条件が必要となってくる。

多くの人は、近視眼的に物事を考え、予算以上の消費活動をすることもある。いずれにせよ、ケインズ的な財政政策には効果がないという、これも基礎的な命題である。


(3)モディリアーニ・ミラー命題

これは「MM定理」とも称され、資本市場が完全であり、法人税などの制度上の歪みがなければ、企業が資本を株式発行で得ようが社債発行で得ようが、企業価値には影響しないという説である。

これはファイナンスの命題でもあるが、どのような形で資本調達しても企業の経営には変わりがないという、企業版「リカード・バローの等価命題」と言える。

しかし、実際には資本調達によっては税制上の優遇策があったりなかったりとMM命題が成り立たないケースが大いに考えられる。

ケインズ経済学とルーカス批判

経済学の学部の講義では、特にマクロ経済学での「ケインズ派」と「古典派」の区分が必要である。

現在のマクロ経済学ではそれぞれ「短期」と「長期」、「ミクロ経済学的基礎づけなし」と「あり」と言い、「ケインズ派」とか「古典派」とか言わなくなってきた。


「ケインズ派」と「古典派」の違い

そもそも、この違いは何処から来るものか。1つは「時間軸」であると言える。


                 過去       現在        未来

(1)ケインズ派       減税実施 ⇒  GDP↑

(2)古典派                    GDP↑  ⇐ 減税実施予定


従来のケインズ経済学では、過去に行った経済政策が現在の可処分所得や金利を変化させ、消費・投資支出に影響を与え、結果GDPや雇用、物価に影響する、いわゆる「適応的」な反応として、マクロ経済を見ている。

これに対して、古典派では将来に行われると予想される経済政策が現在の経済に影響を与えるという「前向き(フォワード・ルッキング)」な経済観を持っていると言える。

まさにこれを象徴する考え方として「ルーカス批判」なるものがある。ロバート・ルーカス博士が1970年代の論文で、「景気予測は現在の人々の将来予想を適切に反映せず、景気予測に基づく経済政策の実施は有害無益だ」とする趣旨の主張を展開した。

現在のマクロ経済学はこの「ルーカス批判」を受けて、人々の将来予想を反映させると経済政策の影響がどう変わるのかという、ケインズ経済学とは別の観点からのアプローチを可能にした。

いわゆる「合理的期待」という発想である。これにより、ケインズ経済学で無視されてきた①財政金融政策の持つ問題点、②人々の生活水準(厚生)に与える影響、③より効果的な政策ルール設計、について広範に分析する術を獲得した。

短期・長期

「長期」と「短期」の違いを指摘することも重要ではあるが、固定的要素を含む、すなわち物価が硬直的、変動しない「短期」の経済において行う政策と、物価が伸縮的で速やかに市場が清算される「長期」の経済において行う政策との違いも、上記の時間軸のとり方で説明できる。

すなわち、現在の物価が将来経済の物価を反映しているという「前向きな」想定を行うと、政策効果の考え方がケインズ派のそれと異なるのだ。

現在の物価が将来の物価、すなわち将来の均衡を反映していると、市場はすぐさま清算、需給は一致し、ケインズ的な総需要拡大策はGDPを増やさず、自然率(完全雇用時)GDPが実現する。

このときはもはや、需要政策でGDPや雇用を変動させることはできず、労働市場を流動化する、職業教育を充実させるなどの「成長政策」が重要となる。

実際、このケインズ派と古典派、どちらが正しいのか気になるところではあるが、どちらが正しいというよりも、「時間軸ひとつで経済政策の効果が異なるという視点を与えている」点に価値を見出すべきかと思う。 

Thursday, October 02, 2014

Lucky Sevens 777

777 yen! This kind of reaction is called 'representative heuristic'. After a little though, we can find that the probability of 777 occurring is the same as that of 776 occurring, but we people don't think like that. Nothing good will happen...

777円!このような反応は「代表性ヒューリスティクス」と呼ばれている。777が起こる確率は776のそれと同じだが、 我々人はそう考えない。何もいいことなんて起こらない。

御嶽山の噴火

こ の度、御嶽山(おんたけさん)の噴火で被害に遭われた方、ご親族の皆さんにお見舞い申し上げます。

偉大な自然に我々は為す術がない。同時に、我々が自然に は常に「リスク」と隣り合わせである、という認識も大事である。福島第一原発然り、広島土砂災害然り、「危険認識」、「リスクヘッジ」ができていな かった、といえなくもない。
 
正直「千年に1度の危機」という認識では困る。

阪神淡路大震災から20年も経たないうちに東北の震災を経験し、福島原発の前にもんじゅの事故があったし、 広島の前も奈良・和歌山の土砂災害は記憶に新しい。御嶽山の前も、20年以上前だが雲仙普賢岳があった。デング熱の前は鳥インフルエンザもあったし、この危険も存続中だ。
 
予期できるリスクを最小限にすることは我々でも十分可能だ。

「死火山」という考え方がない今、温暖化で降水量が増え、疫病の危険が増えている今、高齢化で財政危機に立たされている今、我々は「今」というリスクに、何を成すべきかが問われている。

Calorie and Weight

The relationship between calorie intake and weight. We cannot gain weight to take the amount of calorie necessary for us to live per day.

カロリー摂取量と体重の関係。1日の必要なカロリー量をとっていれば体重は増えない。

Jack Ma and the World Future

I saw Jack Ma, the founder of Alibaba, a Chinese entrepreneur, replying to an interviewer on its IPO, and I wondered how quickly and definitely the world map is changing: China and India are growing fast, whereas Japan and the EU are declining.

Japan's GDP is now one third as much as that of China in terms of US dollar. Moreover, Thompson Reuters predicts some Chinese will win the Nobel Prizes.

I do not worry about that, rather, I hope that the world will less depend on the US politics and culture and that it will be full of variety, though there would not be a legend Jack Ma but for the US market.

Uzawa Passed Away 宇沢去る

Hirofumi Uzawa passed away. He was 86, known as a mathematical economist.

I learned his name at Prof. Drewianka's econ 801, the Hurwics-Uzawa demand theorem and at growth text, the Uzawa-Lucas human-capital model.

I first took his lecture at Doshisha University 2003. He blamed Milton Friedman, his ex Chicago colleague, for his market-oriented economics, but only in this point do I disagree with Prof Uzawa. Rest in Peace.


宇沢教授が亡くなった。86歳。数理経済学者として知られた。私はドレウィアンカ教授の授業で「ハーヴィッツ・宇沢定理」、経済成長論の教科書で「宇沢・ ルーカスモデル」を知った。初めて同志社大で彼の講演を聞いた。同じシカゴ大の同僚ミルトン・フリードマンを批判していた。けど、僕は宇沢氏をこの点で賛 成しない。ご冥福をお祈りいたします。