Saturday, August 12, 2006

金融政策と公定歩合(2)

前回、金融政策の政策目標が「公定歩合」から「短期金利」に変わっていることを指摘した。それでは、政策上「公定歩合」の役割はなくなったのか。いや、そうではない。公定歩合の役割は依然重要なものである。では、いかなるものなのか。2つ考えられている。

①短期金融市場の事実上の上限金利

②手形法や租税特別措置法において、違反金を算定するときの基準金利

①の上限金利とは、2001年に導入された補完貸付制度(ロンバート型貸出制度)という、金融機関があらかじめ日本銀行に差し入れた担保の範囲内で、日銀から短期資金を借り入れられる制度におけるものである。

金融機関はこの制度を使って、日本銀行の誘導目標金利(日本銀行はあらかじめ金利の水準を決めて、その金利に誘導するように市場に資金を供給する)よりも低金利の「公定歩合」で日銀から資金を借りることができる。信用力が足りず、資金が調達できない金融機関にとって、「駆け込み寺」としての機能を果たすこの制度により、「公定歩合」は事実上の短期金融市場の上限金利という役割を果たすようになった。

また、「公定歩合」と短期金融市場の短期金利との差に注目することが政策上重要な意味を持っているとされている。公定歩合は短期金融市場の上限金利としての役割を果たすが、仮に日銀が公定歩合を引き上げれば、日銀が短期金利の上昇を容認した、つまり、金融を引き締めることを市場に受け止められるようにしたことになる。このようなアナウンスメント効果を通じて、金融市場に影響を与えることができるという意味で、公定歩合は金融政策上依然重要であるのだ。

以下年表
1995年3月 金融調節の基本的な指標を無担保コール翌日物金利に変更
1996年1月 日本銀行が金融調節に公定歩合による日銀貸出を行わないと表明
2001年2月 補完貸付制度を導入
2006年3月 量的緩和解除
2006年7月 ゼロ金利解除
(以上で、このシリーズは終わり)

上記ブログの内容は、読売新聞「なるほど! 経済」2006.7.19.を参考文献として、一部引用されている。

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