嗚呼、頭が痛い話題だ。大竹教授のブログはネットカフェ難民についてである。
『ただ、「派遣の規制緩和が行われなければ、問題は発生しなかったのか」、というとそうではないだろう。携帯電話やネットを使うことで労働市場のマッチング能力が向上したという側面があるのは間違いない。問題は、その効率性の上昇という果実が、労働者にほとんど分配されていないということだ。高まった労働市場のマッチング機能を生かして、その効率性の上昇分を、派遣業者だけが取ってしまうことがないような仕組みを作ることが必要ではないか。』
特に、「問題は、その効率性の上昇という果実が、労働者にほとんど分配されていないということだ。高まった労働市場のマッチング機能を生かして、その効率性の上昇分を、派遣業者だけが取ってしまうことがないような仕組みを作ることが必要ではないか。」という部分。
労働市場における派遣業者(職を労働者に紹介し、派遣先企業からマージンをとって業務を営む、したがって、派遣業者は直接労働者を指揮監督せず、派遣先がそれを行う)についての実態は驚くほど明らかにされていないのが現状ではなかろうか。
派遣業者が寡占的に行動していれば、労働市場において、競争市場下で実現するだろう市場厚生(余剰)よりも小さくなるように考えられる。本来労働者に与えられるであろう賃金が派遣業者のマージンにより下がり、労働者に効率性の余剰が十分に配分されていない。つまり、市場において「死加重的損失」が発生している可能性が考えられる。(価格が限界費用よりも高いために、本来市場で実現すべき販売/購買量が低くなることと同じ。)
もしそうであるなら、派遣業者への何らかの規制措置を市場の効率性の観点から考えなくてはならないかもしれない。労働市場の規制緩和、つまり派遣業務の適用拡大は雇用の流動化に一役を買い、多くの失業者に一時的な職のチャンスが与えられたのは事実かもしれない。しかし、このことが非正規雇用を大きくさせ、所得格差を拡大させた一因であると見る識者も多い。(大竹教授は所得格差を高齢化の証左と見ていることで内外の批判を浴びているが、その点についてはここでは論じない。)
非正規、正規であれ、所得が与えられるチャンスは貴重であることは確かだが、大竹教授の言うように、効率性の配分を労働者/派遣業者の間で適正(?)にすることが大きな課題かもしれない。
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