Sunday, March 30, 2014

消費増税について

消費増税について論点をまとめてみた。

(1)商品の値上がり

消費増税は商品価格を上げる。しかし、価格は今回の消費増税分の最大3%まで上がる。商品取引は需要と供給のバランスで行われる。需要すなわち消費者の制約により、販売者、供給者側は増税分3%まで上げることはできない。3%未満の価格上昇である。

消費税は「仕入税額控除」があり、製造者が卸(おろし)Aに出すときにかかる消費税分を、卸Aが卸Bに出すときにかかる消費税増税分から控除するというもの。これにより、累積的に消費税負担が増えない措置があるので、商品価格の上昇は軽微である。

しかし、増税を商品価格に転嫁できないために、賃金をカットしたり、業務をアウトソースするなどする業者もあり、著しい資源配分の歪みが生じる。これは所得税を上げると働かない人々が出てくるのと同じで、商品の内容物を変更したり、生産ラインを縮小するなどして、増税により生じる業務が生まれる。このように生産者・販売者には「見えない負担」を強いられうる。


(2)景気・物価への影響

商品価格の上昇は、個々の消費者、生産者のみならず、経済全体の消費需要や投資需要を抑制、総需要を引き下げる。したがって、日本のGDPを減少させる。

しかし、消費需要に関してはこの30年かなり安定的に推移し(GDPの60%)、97年の増税時も大きく減少していない。今回の消費増税も消費需要を大きく減少させないだろう。

問題は投資需要である。かつてヒックスが「かごの中の鳥」といったように、変動は激しく、景気を左右させる。投資財への増税は、投資財需要を減少させ、景気を悪化させるかもしれない。

このとき、物価に低下圧力が加わるが、円安による海外商品の価格上昇と合わせると、物価は安定的に推移するものと考えられる。

結論として、消費増税の景気と物価への影響は、消費需要の歯止め効果(ラチェット効果)と投資需要の低下効果のどちらが大きいかに依存するが、比較的軽微な影響にとどまるかもしれない。


(3)低所得者への対応

消費税は低所得者に不利といわれているが(逆進性)、大阪大学の大竹文雄、小原美紀の研究によると、消費税はむしろ比例税に近い効果がある。

彼らの指摘はこうだ。生涯所得の多い世帯ほど消費支出も大きく、消費税の負担が大きい。逆に低所得者はその分消費支出が小さいので、消費税の負担も小さい。年収1000万円の人の比例税を税率10%とすると100万円。年収100万円だと10万円の負担。消費税が比例税に近いわけだ。

しかしながら、この結論を以て、特定の商品に対する軽減税率の導入の賛否は問えない。 基礎的な消費支出、例えば、同じ所得階層でも、医薬品などの価格上昇は疾患を抱える人々に対して負担を強いられ、所得分配に著しい不公平感が出てくる。

この場合、申告時の医療費控除などである程度は軽減できそうだが、年収が不安定という世帯も多く、軽減対策は考えるべき課題である。

追記2014/04/01 厚労省は臨時福祉給付金という対策を施している。

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