年収300万円。これは本当に低い値なのか。
内閣府の国民所得(要素費用表示)を使って考えてみたい。
国民所得とは、日本人が1年間に稼ぎ出した付加価値(企業でいう「利益」)であり、これが消費や投資として国内外で支出され、経済に循環している。
日本の総人口は1億2700万人。うち就業者は6200万人。(総務省統計局)
この総人口で国民所得を割ると、日本人1人当たりの国民所得が出てくる。ざっと276万円だ。
これは、非労働人口を含めてのことなので低く出ているが、就業者による社会保障・税による移転支払を考えると、大体日本人の稼得能力は270万円前後と考えてよい。
「今の時代、年収300万円あればいいですよ」とこの勘定から言えそうであるが、重要なのは、これが日本人の幸福を満たす値なのかどうかである。
ここで簡単な確かめ方がある。「黄金律」という考え方である。少し分厚いマクロ経済学の本で調べればすぐに見つかる。
黄金律とは、「1人当たり消費量が最大となる1人当たり資本量のこと」を指し、いわば日本人1人当たりの幸福度を考えることができる。
これによると、日本の貯蓄率がおおよそ21%、資本分配率がおおよそ30%だとして計算すると、日本は黄金律の資本水準、すなわち理想的な幸福状態に到達していない。
黄金律を達成するためには、1人当たり国民所得を現状の水準よりも18.4%だけ上昇させる必要があり、1人当たりだと約327万円が必要である。
結論としては、「年収300万円はちょっと低いかな」ということだろう。
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