Tuesday, October 30, 2007

奨学金の厳格化は格差を縮小するか?

奨学金予算削減へ 回収不能2000億円/遊興費に転用増え…
10月29日8時0分配信
産経新聞

財務省は28日、来年度予算で文部科学省の奨学金事業予算を削減する方針を固めた。奨学金を遊興費に転用する学生が目立ち、苦学生支援という奨学金本来の意味が薄れつつあると判断している。奨学金を返さず、回収不能に陥った延滞債権総額も急増、平成18年度には2000億円を突破しており、財務省では新たな保証制度の義務化も迫る構えだ。 

文部科学省は来年度予算の概算要求で、奨学金関係予算として前年度を約210億円上回る1439億円を計上した。 奨学生数は、19年度で全国の大学・短大生の3分の1に当たる114万人に膨らんでおり、奨学生数の拡大を背景に奨学金関係予算は年々増加している。 ただ、財務省は奨学金が「必ずしも苦学生でない人も対象に入っている」と指摘。無利子奨学金に比べて審査基準が緩い有利子奨学金まで含めると、年間所得が1344万円以下の世帯が対象で、大学生などの子供を抱える世帯の約8割が条件に当てはまる。審査の学力基準も緩く「手を挙げた人はだいたい奨学金がもらえる」(主計局)のが現状だという。 財務省によると、奨学金を電話代や海外旅行費など勉学以外の目的に費やす奨学生が増加傾向にある。これに対して勉学費や書籍購入費は大幅に減少しており、財務省は奨学金が勉学よりも娯楽に振り向けられているとみている。 一方、貸し出した奨学金が回収不能に陥るケースも急増している。 18年度には延滞債権総額が2000億円を超え、15年ほどで約3倍に膨らんだ。旧日本育英会の奨学金事業を引き継いだ日本学生支援機構が回収を進めているが、18年度に回収を行った1万件のうち、約半数の4395件は居所不明などの理由で未回収のままだ。 

このため、財務省は奨学生に対する機関保証の義務化などを検討している。奨学生が毎月一定額の保証料を日本国際教育支援協会など保証機関に支払うことで、返済が滞った場合、保証機関が本人に代わって返済する制度を導入することにより、同省は未回収リスクを回避できるとみている。 文科省は「事業費の不足で、貸与の条件を満たしていても奨学金を受けられない学生が毎年いるのが現状」として予算増額の必要性を強調するが、財務省は「納税者に説明できるとは思えない」として削減方針を固めている。


この件については、正直私自身にとって、とても耳の痛い内容である。私は実際に奨学金を受ける当事者だからだ。が、上記の記事の内容から、仕方のないことかもしれない。奨学金予算は削減すべきかもしれない。

実際、手を上げれば奨学金がもらえるのは事実で、奨学生候補者に対する審査はない。奨学生の成績によって、奨学金を配分すべきだとも思うが、成績のよしあしが、奨学生の学費に当てられる所得の多寡と正の相関があれば、安易に成績で奨学金を配分すべきではないかもしれない。なぜなら、所得の多寡が、その生徒の学力に正の影響を与えているかもしれないからだ。

※ 統計学では、相関関係は因果関係とは違うが、なんらかの因果関係の可能性が認められうる有効なデータである。しかしながら、あくまで、ここで考えられる因果関係は蓋然性の問題であって、実際には因果関係がないことも十分にありえる。この問題は、細かい実証研究の対象ではある。)

だが、いったん手を上げた生徒に奨学金を与え、1年後成績表を提出することで2年目以降の奨学金を配分しては、とも思うし、奨学金を何に使ったのか報告させるなどの手段も考えられるが、それに伴う事務経費(すなわち税金)が莫大なものになることが予想される。

では、どうすればよいのか?いっそのこと、日本共産党が言うように、学費を無料にすればよいのでは?ただし、入学試験を思いっきり難しくして、誰でも入れない大学を作ってみてはとも、大胆にも思うがいかがなものか。

いずれにせよ、奨学生の審査基準、できれば誰の目にも明らかなように具体的な数値を設けて、(たとえば、アメリカ流にGPAが3.2以上、TOEFLが213点以上とか設けて)奨学金の配分を決めることがもっともよい方法であるような気がする。そして、毎年更新制にして、1年目の成績が不良であれば、2年目の奨学金の配分をストップする、といった手段をとれば、もう少し学部、または修士の大学生は勉強に励むのではないだろうか?(かくいう自分は、勉強ができる人間ではないが、阪大のコアコースは優であった。ただ、自分の専攻としたいマクロ経済学は可だったが…。確かに出来が悪かったのは認められる。)

そうすれば、アルバイトする学生が減るために、サイドイフェクトとして、アルバイト/パート市場において労働需要が超過し、もう少しフリーター(労働供給サイド)の所得、ならびに待遇環境がよくなるのではとも考えられる。(これはまったくの小生の仮説ではあるが、大学生が勉強せず、アルバイトをするので、労働市場における均衡賃金が下落し、フリーターの収入環境がよくならないと考えられる。近年日本では新卒採用が活況を呈し、アルバイターの確保が難しくなってきているという。そのため、特に都市部では賃金が上昇しているという。このことから類推すると、大学生にバイトを抑制するようにすれば、アルバイターの収入環境はよくなりうるように考えられるが、いかがなものか。)

つまり小生の仮説は、奨学金の配分を厳格にすれば、学部修士の大学生は勉強し、バイトをしなくなり、それが、アルバイター、パート労働の供給を減らし、今現在専業として働くアルバイター、パートの所得、すなわち経済厚生をよくしうる。したがって、パートと正社員との賃金/経済格差の縮小にも何がしか貢献しうる。つまり、奨学金の厳格化は、経済格差を縮小させる。

以上は、経済学を学ぶものにとってあってはならない、未検証の先験命題に基づいた大胆な仮説である。当然、奨学金の配分の厳格化が、たとえば学生の旅行需要を減らすかもしれない。したがって、交通機関、飲食関係、旅行会社にとって悪いことかもれない。

いずれにせよ、私はこんなことばかり考えている。

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