まず、大阪について、2つの指標を見比べたい。
(1)失業率について
全体の完全失業率を観察すると、全国平均よりも高いことがわかる。さらに年齢別で完全失業率の推移を見ると、15-24歳の平均値が9.8で最も高く、続く24-34歳の平均値が6.7で高い。また中高年層(55-64歳)の平均値も5.8と高さが目立つ。若年層と中高年層の失業率が高いのは大阪府に限ったことではないが、全体の失業率を大きく押し上げている要因としては見逃せまい。
私が特に注目したいのは、「従業者規模/産業別雇用者」という資料である。従業者規模の総数で見ると大阪は30-499人が平均的に多く、大阪が中小企業の街であることがよくわかる。そして産業別に見ると、平均値で 卸売・小売業711で最も多く、製造業688、医療福祉340、と続いている。雇用者で見ると卸売小売が多いのがうかがえよう。なおサービス業という項目が大きいが、これはこれらの分類に属さない残差であるので、ここでは考えないでおこう。また、産業別の雇用者の伸び率をみると、製造、卸小売の伸びは下がっている。
こんどは、この従業者/雇用者数を裏付ける指標である府内総生産を見ると、卸売小売ならびに製造業が全体的に総額は大きいが、伸び率は横ばいか若干伸びているだけである。また、府民所得の分配という指標もあわせてみると、お父さんお母さんの雇用者報酬が減少しているのに対して、企業所得が大きく伸びている。企業所得とは内部留保やその他配当などに回される利潤というものに該当する。現に配当が増えていることもこの資料でわかる。この原因はよくわからないが、以上をまとめると、
完全失業率は全国平均で見て高く、卸小売、製造が就業者総数で見て大きい。また、卸小売、製造の所得の伸び、雇用者数の伸びで見て大きな伸びを示していない。さらに全体の雇用者報酬は下がり、消費支出も大阪市の資料で見ると、全国を総額で下回り、その伸びは軒並み下がっている。要は、「景気がようない」ということである。
(2)府財政について
この資料によると、「府税の大きな部分を占めてきた法人2税(法人住民税、法人事業税)が、ピーク時の89年度に対して98年度には半減(約4000億円の減)するなど激しく落ち込ん」でいる、と分析がなされている。府税総額に占める割合も6割から4割弱へと小さくなっている。
また公債費、借金の伸びが大きく、「地方債残高の内訳を見れば、単独事業の財源となる一般単独事業債が、法人2税の落ち込みに対する減収補てん債とともに、この急増に大きく貢献していることがわかる」としている。結論は、この資料に異論はない。つまり、「府税収入が減少し経常収支が悪化しているにもかかわらず、政府の「景気対策」への追随と関西財界の期待にこたえて、起債と基金取崩しによる普通建設事業を強引に進めてきたことが、今日の府財政危機の最大の原因である」。
産経新聞の社説のとおり、喫緊の課題は「財政再建」である。平成10年度から9年連続で実質収支の赤字が続き、府債残高は約4兆3000億円にのぼる。
また、「大阪府の経済」は好転せず、完全失業率は全国3位で、生活保護世帯数の増加もとまらない。
究極の選択は通貨変更
この話はあまり現実的ではないが、私が常々考えるのは、大阪経済を復興させる究極の政策選択は「円の放棄」であると考えている。「大阪独立」とまではいかなくても、現に大阪と東京の経済規模は3倍を超えている。日本列島にある別の国々だと考えて間違いないだろう。
円を放棄して、「大阪通貨」を独自に発行することが大阪の経済を立て直す政策として考慮に入れるべきである。これは、理屈は簡単だ。大阪に流通する通貨価値を東京で流通するそれよりも減価させ、あたかも中国と日本との間の国際貿易のような形にもっていくことである。ただ、大阪通貨の大きな減価は大阪府内にある資産価値の大幅な減価を招く負の作用ももちろんあり、大阪府内において債権者から債務者への大幅な所得分配が起こる。これが、大きな信用不安を生む可能性は大である。(90年代に通貨価値を減じたアルゼンチンの事例を思い出せ。)
それにしても、大阪府内で生産される財/サービスの価格が東京のものよりも安くなり、大阪に移住する人、企業が増えることが、大阪の活性化につながることが予想されよう。また、大阪の国際競争力も増そう。これが、世界各国からの人企業を呼び寄せることも考えられる。人、企業が増えることで、府内の所得が伸び、税収が伸び、大阪の負債の減じよう。その後大きな社会資本(学校、病院、道路など)整備の需要が起こり、さらなる社会資本の拡充が総需要を拡充させ、またプラスの外部効果を持って人、企業を呼び寄せよう。短期的に見て信用不安を招く危険な政策であるものの、長期的に見て大阪の経済活性化に大きく貢献しよう。
私は本気でこの政策をしてほしいと考えているが、橋下新知事はそんなことはしないだろう。
No comments:
Post a Comment