Thursday, June 08, 2006

世界の中の日本:食の大国「日本」

今日の小泉内閣メールマガジンから、東京大学大学院教授 伊藤元重教授の「グローバル戦略」についての投稿に注目しよう。

「グローバル戦略」について、・・・一貫して重視してきたことは、「選択と集中(比較優位の徹底)」ということでした。ヒト・モノ・カネの制約の下で我が国の活力を有効に引き出すためには、国内の資源を我が国が得意とする分野に集中させ、それを補完する形で海外の資源を最大限に活用することが鍵となります。 

私もこの考え方に異論はない。日本が国際社会の中で大きな存在感を示すために、日本にしかできないことにもっと力を入れていくべきであると考えている。こうすることで、日本は海外からも高く信頼され、日本人の作る製品やサービスに高い期待が寄せられる。 しいては、日本という国にも信頼が寄せられる。

日本のグローバル化には次のような課題がある。

世界で通用する専門的な知識や技術等をもつ優秀な外国人人材の受入れ拡大や介護等の分野の外国人人材の受入れ、・・・農業の国際競争力の向上のために農地などの稀少な資源を競争力のある農業者に集中させる仕組みの構築を急ぐこと

日本では外国人受け入れに対する抵抗が依然強い。言葉の問題もさることながら、それに付随する文化的摩擦や政治的紛争に対する警戒があるのだ。 言葉の通じない外国人が隣に引っ越してきたらどうか考えればよい。

また、農業の国際競争力という話題について、農業とはそもそも市場経済の原理に即さないという神話を唱える識者がいる。つまり、農業はただ食料を生産しているだけではなく、自然環境の調和、地域社会の風景やより豊かで健康的で安全な生活をも考えて、営んでいくべきである、というのである。


農産物は、工場での規格大量生産とは違い、そもそも市場価値には還元できない重要な要素を持つ、というのである。したがって、農業を国際化し、農業を営利民間の企業に任せて、「食の安全・安心」を無視することはあってはならないという。

一見もっともらしい議論ではあるが、上記の理由から「農業の国際化」が批判されることはない。むしろ、その逆で、市場価値には還元できない魅力ある農産物、より安全で環境にやさしい食の生産に日本が特化することで、日本の農業は海外からまたは日本国内の消費者から厚い信頼が寄せられるのである。

別に農業の国際化が食の安全を汚すことはないし、農業の民営化(近年言われている農業の株式会社化)が、健康的な生活を阻害することはない。むしろ、民間企業が農業をするほうが、補助金頼みの自営農家よりもよいかもしれない。ひとたび、安全でない農産物を提供すれば、消費者の信頼は崩れ、会社はすぐにつぶれるからである。

日本の農産物は農薬にまみれていない世界一安全なものである、というのは、もっとも消費者が求めるものではないのか。現に有機農法を売りにして野菜をネット上で販売する自営農家も数多い。

政策的にただ食料自給率を引き上げるのではなく、安心で、魅力ある食を生産できる環境を整備し、食品の安全基準を明確に示し、生産過程、流通過程の情報公開を徹底させることこそ、これから目指すべき食の大国、日本の姿ではないのだろうか。

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