Monday, June 19, 2006

「きっかけ探し」のフリーター

私は将来大学院へ進学するため、現在はフリーターである。フリーターの増加が社会問題として、新聞紙上で報告されている。そして、最近は働かない、勉強しないニートという存在までも注目されている。今日はフリーターについて考えたい。

「フリーター」という言葉は、1987年11月にリクルートの求人情報誌『フロム・エー』で、「フリー」と「アルバイター」が融合して生まれた。

ここで、社会実情データ図録というものをたまたま目にしたので、このサイトのデータに基づいて、フリーターについて話したい。
※以下の内容は、ブログ作成者本人による見解であり、上記紹介のサイトとは何ら関連がない。したがって、以下の内容における誤りはブログ作成者本人によるものである。また、引用箇所は一部修正している。


・・・最近のフリーターの人数は、厚生労働省では213万人(2004年)、内閣府では417万人(2001年)としており、・・・いずれの定義によってもフリーターの人数は10年間で倍増している。 

厚生労働省のフリーターの定義は、フリーターという立場を選択している人(正社員になりたくない人)、内閣府の定義は、フリーターにならざるを得ない立場の人(正社員になれない人)を含むという違いがある。現在無職の人のうち前者はパート・アルバイトを希望する人のみカウントし、後者では、正社員を希望する人を含めてカウントしている。

後者は、正社員になりたくない人となれない人を両方含んでいるので、当然、数は多くなる。なお、内閣府定義のフリーターには就業者としてパート・アルバイトばかりでなく、最近増えている派遣・契約等も含めているのでなおさら数が多くなっている。 

・・・内閣府定義の2001年フリーター数では、若年人口(15~34歳)の9人に1人(12.2%)、学生・主婦を除いた若年人口の5人に1人(21.2%)がフリーターとなっている。  

就業意欲や働くことについての話題は事欠かないが、その多くにフリーターに対する世の感慨を見ることが出来る。働くことを嫌い、人の話を聞かず、個性を主張しすぎ、自分のしたいことしかしない。自分の権利ばかりを主張し、社会的義務を果たさない。将来何がしたいのかわからないといい、「自分探し」と称して親の脛をずっとかじって遊んでいる・・・。

フリーターのイメージはざっとこのようなもので、私自身聞いていて実に耳が痛く、図星であることも多い。しかし、実際にフリーターとはどのような存在なのかを改めて問うことはない。そこで、次に経済誌「エコノミスト」(毎日新聞社)、2005.3.22号の特集記事を紹介しながら、フリーターについてさらに考えよう。

彼らはなぜ、正社員にならないのか
小杉礼子

・・・東京に住む若者を対象にしたインタヴュー・アンケート調査によれば、・・・フリーターは次の3タイプに分けることが出来る。・・・①芸人志望などの「夢追い型」、②自分に合う仕事を探したいなどの「モラトリアム型」、③正社員に応募しても採用されなかったためという「やむを得ず型」、である。
(一部修正)

上記記事によれば、①は全体の1割、②は5割、③は4割を占めるという。バブル期は、①の「夢追い型」がフリーターを意味したが、近年は②、③の「モラトリアム型」、「やむを得ず型」のフリーターが増えているという。

実際には、自分探しに明け暮れ、自己主張の多い、非常識な幼い若者というフリーターのイメージとは少し違う。本当は働きたいんだけれども、満足のゆく職場で働くことが出来ず、キャリアの試行錯誤に心身をすり減らす実情が見えてくる。

フリーター増加の背景は、

①働くことへの若者の意識や行動の変化
②長きに渡った景気の低迷

の2つがあり、②のマクロ経済的要因が大きいと考えられている。また、

③新規学卒(大学を卒業したての者)を重視する企業の採用慣行
④人件費を低く抑えることが出来る非正社員(パート、派遣、アルバイターなど)、教育訓練を必要としない即戦力を求めた中途社員への需要の増加

という企業の労働需要の要因も無視できない。

企業のこのような採用行動の背景には、市場経済の国際競争の激化がある。何より、市場の環境変化に柔軟に対応できる企業経営が求められているため、雇用の流動化(必要なときに採用し、不必要になれば解雇できる)が一般化しつつある。

また、制度的には、

⑤1999年の「労働者派遣法」(1985年成立、86年施行)の改正

がある。これは、派遣対象業務を限定した「ネガティブ・リスト」を破棄し、派遣を原則自由化したのである。これにより、企業はより派遣社員を様々なかたちで利用することが出来るようになり、派遣労働者は一気に増加するようになった。

社会保険などの諸費用のかからないパート、アルバイトなど非正社員へのニーズは事務、経理などを中心に高い。企業としては、営業経費の大部分を占める人件費を極力低く抑え、損益分岐点(損失か利益になるかの境目、これについては、出来れば近いうちに当ブログで紹介したい)を低くできるメリットがある。

しかし、企業経営の実態よりも、一番気にしたいのが、フリーターの気持ちである。私も含め、フリーターの人たちは何よりも今の不安定な現状に甘んじているわけでなく、出来れば、よい仕事に就き、家族世帯を持ち、そのなかで自分らしさを体現したいと考えている。

やりたいことが見つからないのではなく、やりたいことが本当はあるんだけれども、どのようにすればやりたいことが出来るのか、あるいはやりたいことに近づくことが出来るのか、という点で多くのフリーターは模索している。「やりたいこと探し」ではなく、やりたいことの「きっかけ探し」をしているのではないだろうか。少なくとも私はそうだ。

例えば、歌手になるにはどうしたらよいのか。どこのプロダクションに入ればよいのか。お金はどのくらいかかるのか。売れるまでの日々の生活費をどう捻出しようか。年金や保険どうしようか。どのような人に認めてもらう必要があるのか。認めてもらう人にどのようにアプローチし、どのようにアピールすればよいのか。・・・

行政による自分探しや仕事探しのための教育支援・職業紹介支援策は、果たしてフリーターに適合しているのか。やりたいことへのきっかけとなるようなインターンや期限付きの派遣労働(最近は紹介予定派遣といって、ある期間派遣として働き将来正社員になれる雇用契約がある)のほうがより積極的にフリーターの気持ちと行動によい影響を与えることが出来るのではないか。

「等身大の自分との出会い」、「人間力」などという意味のない言葉を並べて、にわか精神論を説くメディア、現状の打開策に職業訓練施設などハコモノを作って対応しようとする行政は、今のフリーターが直面する環境やそれに対するフリーター自身の気持ちをもう少し汲み取るべきではないだろうか。

私は、民間派遣会社と協力し、民間資源を大いに活用したフリーターのための期限付き派遣雇用の斡旋を、フリーター対策としてやってみてはどうだろうか。その目的は、18歳から35歳までのフリーターの職業に対する視野と機会の拡充にあり、時給700円前後の、社会保険完備、住宅付で、官民問わずあらゆる職場に3年にわたり派遣してみてはどうだろうか。

このような派遣の働く機会はたくさんあるだろう。公立小、中学校の補習授業で採点を手伝ったり、福祉、医療施設で、老人の介護や患者、または施設の見回り、など特別なプログラムを組んだインターンよりも、ありのままの職場が体験できるようなインターンこそ効果がある。

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