Sunday, July 09, 2006

北朝鮮と戦争する北朝鮮

北朝鮮が7回に渡ってミサイルを発射した。その意味は何か? 日本では、様々な憶測を呼んでいる中、日本と隣の国である北朝鮮国内では、朝鮮戦争から50年以上たった今なお戦争が続いていることを思い知らされることとなった。

北朝鮮は一体誰と戦っているのか? 常に国を守ることを誇りに思っていることを明言する北朝鮮人民の本当の胸のうちはいかなるものなのか? 北朝鮮に関する報道を耳にする度に、そんな疑問が沸いてでてくる。 そして、常々日本に生まれてよかったこと、そして、今なお戦争する北朝鮮に生まれてこなくてよかったことを思う。

日本と北朝鮮を比較すると、社会主義がいかに失敗したのかがよくわかると同時に、市場経済がいかに優れているのかがよくわかる。先軍政治がいかに愚かしいことなのかが明らかになる。平和がいかに素晴らしいのかがわかる。政治的、思想的自由がいかに重要なのかがよくわかる。 

日本は戦後「吉田ドクトリン」という、経済重視の政治を行ってきた。一部識者は日本を軍事大国であるというが、日本が戦後軍事を何よりも優先し、ミサイル発射実験を行ったことはなかった。 そして、他国を野蛮な言葉を以って誹謗中傷し、非難し、脅迫したことはなかった。

日本が軍事政治でなかった証拠は、まさに戦後世界第2位の経済大国になったことである。サミュエルソンの古い教科書に載っている「大砲とバター」の例に倣えば、日本は希少な資源(人、モノ、カネ)を大砲(軍事)に回さず、バター(民間産業)に回したのである。だからこそ、日本は豊かになりえたのである。 

しかしながら、皮肉にも、今日の日本の発展は朝鮮の存在なしにはありえなかった。日本は、1950年の朝鮮戦争による特需で復興したからだ。もし朝鮮戦争がなければ、もう少し日本の復興は遅れていたのかもしれない。

産軍複合体(民間産業と軍隊がくっつき、互いに発展すること)と言われるが、日本が過去世界に兵器を売って発展したと見ることは出来ない。三菱重工が戦車を作っていることは有名だが、それが日本の発展の牽引とまではいえない。造船、鉄鋼(これらがほとんど軍事用ではなかった)という重化学工業の発展が高度成長をもたらし、日本は貿易摩擦を生んだものの、世界の市民に豊かさを与える財(テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)を供給したのである。

1950年以来、北朝鮮はいまだに戦争をしている。かつて日本は貧しかったが、今は世界で2番目に豊かだ。さて、北朝鮮は誰と戦争しているのか? 豊かになった日本となのか? 韓国あるいは米国となのか? 北朝鮮の最大の敵はおそらく国内の貧しさとそれによる不満、そして何よりもそれを生み出した北朝鮮自身とではないのか。

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