毎日新聞
ヘビースモーカーは、健康リスクや多少の値上げといった「脅し」にはほとんど動じないが、価格が800円になると約7割が禁煙を試みる――。
ニコチン依存度があまり高くない喫煙者には、価格や健康情報も禁煙を試みる動機になった。依存度別の調査は国内初という。 喫煙者616人(平均40歳)を対象に昨年5月にインターネット上で行ったアンケートを分析した。ニコチン依存度を「起床後、いつ最初に吸うか」などによって、高▽中▽低度に3分類。たばこ価格を300円(現状)▽400円▽600円▽800円と変えたり、公共の場での罰金の有無、吸わない家族が肺がんになる可能性など、さまざまな条件を設定して、「やめるか、吸い続けるか」を聞いた。
高度依存者は価格が欧米並みの600円になっても、禁煙を試みる率は30.2%(中度63%、低度78.1%)だった。ところが800円になると、高度67.9%▽中度93.4%▽低度96%に。価格以外の要素は、高度依存者にはほとんど禁煙促進効果はなかった。一方、中低度依存者は「喫煙による死亡リスク」が高まるほど禁煙を試みる率も上がった。 研究成果は、英科学誌「タバココントロール」と厚生労働省の学術誌「厚生の指標」に近く掲載される。
【鶴谷真】 5月21日
もう一つ同じ内容の記事を。
京都新聞
たばこの価格や健康影響などに対する喫煙者の意識と行動を、行動経済学の手法で調べたところ、価格が2倍になればニコチン依存度が比較的低い人の多くが禁煙を考えることが、依田高典・京都大経済学研究科教授、西村周三副学長、後藤励・甲南大准教授らの研究で分かり、21日に発表した。
ニコチン依存度が高いヘビースモーカーは、3倍近い800円になっても、3人に1人は禁煙を考えないなど「頑固」だという。 20歳以上の男女1022人に対して、インターネットを通じて、喫煙の有無やニコチン依存度、禁煙を考えるきっかけとなる事柄などについて調査し、行動解析した。依存度を考えた研究は日本で初めて。 「朝起きて5分以内に喫煙する」などの高度ニコチン依存者は、たばこ価格が現在の2倍の600円程度になっても、禁煙を考えるのは30・2%だったが、中度で63・0%、低度では78・1%と、依存度が低いほど禁煙効果が高いことが分かった。低中度の場合、「喫煙による死亡リスク」「家族の肺がんリスク」などが高く見積もられた情報を知っても禁煙を考えるが、高度依存者は判断材料にしていなかった。
喫煙者と非喫煙者それぞれの行動傾向についても解析した。100円で確率2分の1のギャンブルをするかしないかを選ぶとき、非喫煙者は期待する賞金が269円でないと選ばないが、喫煙者は214円で選び、ギャンブル好きな傾向があるという。「ギャンブラー的傾向がたばこのせいなのか、そういう人が喫煙しているのかは分からない」(依田教授)という。 西村副学長らは「思い切った値上げが禁煙を考えさせることが分かった」といい、実際に禁煙行動につながるのか、何が禁煙の成否に関係するのか、さらに研究を進める。
5月21日
さらに興味深いデータがあるので参照して欲しい。これは読売新聞のアンケート調査であるが、
2006年7月1日のたばこ税増税で、禁煙したり喫煙本数を減らした人は喫煙者の約2割だった。「近く禁煙したい」と答えた2割を合わせると、喫煙者の約4割がたばこと距離を置こうとしていることがわかった。(水上嘉久)
また、タバコの消費量と値段の関係であるが、ここにタバコの値段の国際比較なるものがある。このサイトからの引用は下記のとおり。
イギリスでは1981年に20%もの値上げを行った結果、消費量が16%減少しました。…たばこにかかる税金の小売価格に占める比率は、アメリカが27%、カナダ86%、ドイツ73%、アイルランド75%、ニュージーランド77%となっています。日本のたばこ税は消費税を含めて59.7%です(「ワールド・スモーキング&ヘルス」誌、90年)。…95年現在の紙巻たばこ1箱(20本)の価格を高い国から順に並べると、…日本は2.47ドルで16位に入っています。
この資料を見ると、日本はまだ随分タバコ1箱の値段が安いようである。経済学が教えるように、財への需要は価格の減少関数であることが類推できよう。そして、需要は価格だけではなく、税金からも影響を受けることが見て取れよう。
さて、私の母校である大阪大学社会経済研究所の池田新介教授の話によると、せっかちな人ほど、喫煙をするという。つまり、一般に喫煙者は、タバコを吸いたいという現在の利益と、健康を害するという将来の不利益(の割引現在価値)との比較において、現在の利益を優先し(忍耐力が低い)、健康のリスクを省みない(危険回避度が低い)からこそ喫煙に走るという。
また、所得が高く、幸せだと感じている人ほど、せっかちではなく、不幸を感じている人ほど当面の心の平安が求められるという。そして、タバコを吸う人はあまり幸せではないという。この不幸の大きさは、年収200万円が減じたのと等しいという。大変面白い研究である。
ちなみに、私はタバコを呑んだことは一度もない。タバコがどんなものかを知らない。ただ、隣でタバコを吸われるとあまりいい気分ではない。不快だ。ハーバード大学経済学部のロバート・J・バロー教授もタバコが不快だとおっしゃっていた。
いずれにせよ、タバコがなくなるのは私にとっていいことである。
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