Friday, January 24, 2014

安倍首相@ダボス2014(日本語訳全文)



何年もの間、評論家は日本を「日の沈む国」と呼びました。日本のような成熟した経済にとって、成長は不可能だというのです。公的債務は持続不可能だというのです。停滞候群におかされていることを指摘したのです。

しかし今、そのような声は聞かれなくなり、日本経済はマイナスからプラス成長に振り替し、慢性的なデフレから解放されつつあります。今春、賃金が上昇し、やがて消費は大きく増加します。我々の財政は安定的に持ち直し、財政は健全化の道を進んでいます。

そして、経済が持ち直せば日本人はより躍動的にきらめいてきます。2020年東京五輪を開催するという人々の熱気が反映されているのです。

夕暮れではなく、新たな夜明け。それが今の日本です。なぜなら、確実な改革が不可能だという観念を打ち破ったからです。私は、既得権益の固い岩を破壊するのに十分なほど強いドリルのように行動するのをいとわない、と言ってきたし、現にそうしてきました。

例えば、日本の電力市場を完全に自由化します。6年後のオリンピックの頃までには電力は発送電分離の完全に競争的な市場になるでしょう。

また、医療を産業として促進します。日本は再生医療の先頭に立ち、民間部門の研究室において幹細胞を作り出すことを可能にいたします。そして、アメリカのメイヨ医院のように企業形態の大規模な医療供給主体が必要なためさらに改革を提案します。

また、40年以上の長きにわたって続いてきた減反制度を廃止しています。民間企業が農業に参入するときの壁を取り除き、公的な需給管理をなくし、農家が好きな作物を育てることを可能にします。

間もなく規制緩和策が始動します。今後2年間で選定された分野で既得権益は除去されるでしょう。例えば、世界規模の日本の都市において床面積制限が廃止され、廃棄物ゼロの街、複合ビジネス施設と高い質の住居が次々と誕生します。

同様に、環太平洋経済連携協定(TPP)が政策の重要な柱になりますが、我々は先だって日本と欧州との経済連携協定を進めていきます。結果的に、日本経済は国際的な投資、貿易と知識の交流に深く統合されるでしょう。海外からの企業や人々から日本がもっともビジネスのしやすい場として認知されるでしょう。

政府年金基金のような日本の公的資金の管理は、今や約1.2兆ドルに上りますが、大きな変化にさらされています。我々は公的資金が成長を生み出す投資に結び付くように、基金のポートフォリオの組み替えを含めて、改革を致します。

法人税が国際的に競争的な水準になるようにし、4月には2.4ポイント法人税を引き下げ、賃上げ、研究開発や設備投資に資金が回るように税制を変えていきます。

同時に、古い産業に縛られている労働市場を改革します。新しい産業は革新的で創造的な人材を必要としています。労働者が斜陽産業から成長産業へ移り、高い報酬が得られるように助成を進めてまいります。

もちろん、急速に進む少子高齢化の中で、投資家は「どこに革新的で創造的な人材を見出せるのか」と問うでしょう。

かつて、アリアナ・ハフトン氏は、「もしリーマン兄弟がリーマン兄妹だったなら、会社は生き残っていた」と言いました。日本の企業文化は男性中心で、背広の世界です。

ヒラリー・クリントン氏が、女性が男性と同じ比率で労働市場に参画したら日本のGDPは16%増加するだろうと私に話してくれた時、大いに励まされました。実際、日本の女性の労働力は最も活用されていない経済資源なのです。

日本は女性が輝く場所にならなければならない。外国人労働者の参画と同様に、より柔軟な労働環境を前提とする目標、すなわち女性管理職30%を2020年までに実現したい。

次の国会において、法制度改革という形で大きな改革策を控えています。社外取締役を増やすのです。来月、機関投資家が大きな役割が果たせるように企業統治における財務管理の規約を提案します。

これら改革の複合効果は2020年までに国内向け投資を2倍にし、日本の国土をよみがえらせ、経済の風景を劇的に変化させると確信しています。

しかし、やらなければならないことも多い。福島第一原発の事故をもたらした東北震災から間もなく3年が過ぎようとしている。復興はまだ途上ですが、困難を乗り越える相互援助と忍耐力という生き残った人々の精神のように世界中の愛と共感は我々を深く励ましました。

日本はより積極的に世界平和と発展に貢献しなければならないという思いが、同じ精神の中にあります。相互に助け合わずに、世界が直面する課題を1人で解決することはできません。たった一つの国が自力で平和を守ることはできないのです。

例えば、カンボジアでは日本人が作った病院が乳幼児死亡率を下げることに役立ち、フィリピンでは、日本の自衛隊が、昨年11月の台風の人道復興に活躍しました。また、ジプシに駐在する日本人は海賊に厳戒態勢で臨み、世界中からの船舶を守っています。

日本は無限の可能性を持った隣国に囲まれています。中国、韓国、ASEAN諸国、インド、ロシア、そして太平洋をまたぐTPP締結国。実際、アジアが世界経済のけん引役として、持続的な平和と繁栄を達成する必要性は決して大きいものではないのです。地域の安定を脅かすグローバルな影響も大きいからです。

繁栄を支える土台は、ヒトとモノの移動の自由です。海上輸送航路、航空圏、そして今や宇宙やサイバー空間において、移動の自由は保たれなければならない。これら不可欠な公共財の維持に必要な唯一の手段は、民主主義、人権、自由のような普遍的価値を促進し、法の支配を厳格に保持することなのです。

代替案はありません。アジアの成長の成果が軍事拡大に費やされてはいけません。革新や人的資本への投資に使わなければならず、そうすることで地域の経済成長がさらに促進するのです。他の場所においても同様ですが、アジア諸国の間の信用は繁栄と平和に不可欠で、これは脅迫や武力を通じてではなく、国際法の順守と対話を通じてのみしか達成できないのです。

信用と秩序の地域を作るために、私はアジアと世界に訴えたい。アジアにおいて抑えられない軍事拡張を防ぐには、防衛予算を完全に透明化し、公にされるべきです。さらに、アジア諸国政府は、危機管理と軍部間の強い対話のチャネルの仕組みを構築し、さらに国際的な海事法に基づく行動を促進するルールを作らなければなりません。

そして、そのときこそアジアで持続的成長と繁栄を達成し、地域における我々すべてが大きな潜在力を発揮することができるのです。

日本は戦争を決して再び犯さないことを誓い、平和な世界のために働くことをやめてはいないのです。日本の経済復興が、世界と地域のさらなる繁栄を見据えて、世界がより緊密になる一助になることが私の切なる希望であります。

原文は、http://www.project-syndicate.org/commentary/shinzo-abe-links-economic-recovery-in-japan-to-improved-prospects-for-global-peace-and-prosperity

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